「男性の豹変」の問題の特徴を一言でいうと、通常は理性的に振る舞う男性が、それを一時的に失わう形で生じるということである。しかし私たちが時折理性を失う行動に出てしまうことは、他にもたくさんある。酩酊して普段なら決してしないような暴行を働いたりする例はいくらでもある。しかしこれはそれが予測出来たらふつうは回避できるはずだ。
ところが酒がやめられないアルコール中毒症の人だったり、ギャンブル依存の人なら、ちょっと酒の匂いをかいだり、ポケットに何枚かの千円札を見つけたりしただけでも、すぐにでも酒を買いに、あるいは近くのパチンコ屋に走るだろう。彼らはごく些細な刺激により簡単に理性を失いかねないのだ。ただしこれらの場合は、彼らがアルコール依存症やギャンブル依存という病気を持っている場合だ。つまりは②に相当する。そして一見健康な男性の豹変問題は、それとは異なる、と私はこれまで述べてきたのだ。
ここで「男性の豹変」の一つの重大な特徴を述べるならば、それはいったんその満足を追求しだすと加速していくということだ。そしてそれを途中で止めることは難しい。これは飲酒やギャンブルと大きく違うところだろう。例えば酒なら、飲めば飲むほど「もっと!もっと!」というわけではない。私は下戸なのでこの体験をしたことがないが、たぶんそうだと思う。いい加減に酔えば「まあ、このくらいにしよう」となるのが普通ではないか。かなり深刻な飲酒癖を有する人も、大体飲む量は決まっている。もちろん生理的な限界ということもあり、そもそも血中濃度が増してアルコール中毒状態になり意識を失なえば、もうそれ以上酒を飲み続けることはできなくなる。でもそうなる前に酔いつぶれて寝てしまうのが普通なのだ。
ではギャンブルはどうか。これも最後にオーガズムに達するということはない。ではだんだん使用量が増えていくコカインなどはどうか。これは同じ量の満足を与えてくれるコカインの量が増えていくといういわゆる耐性という現象だが、一定の量を使い、最終的にオーガスムに達するまで止められない、というわけではない。そして一定の使用量を超えると失神や呼吸困難に至り、その先に死が待っている。
ところが男性の豹変は、いったんオーガスムに向かって突き進んだ場合に抑えが効かなくなるということと関係しているようである。一体どうなっているのだろうか。それが後に述べるポジティブフィードバックとしての性質である。
(以下略)