2021年3月26日金曜日

エッセイの書き直し 7

 さてここまでエッセイを書き進めてやっぱり私の思った通りだということになった。やはりハーマン先生のCPTSD≒従来のヒステリー≒MPDBPDという図式はわかりやすいが単純化されすぎている。私の個人的な意見としても、DIDMPD)とBPDの方々は、ある意味では真逆なのである。私にとってはBPDの人はある種の生得的な何かを持っている。それがトラウマなどによりかなりそれが修飾されてしまうという印象を受ける。私の「推し」はいわゆるhyperbolic temperament である。以下の論文がネットでただで手に入る。
Christopher J. Hopwood, Katherine M. Thomas, Mary C Zanarini によるHyperbolic temperament and borderline personality disorder Personal Ment Health. 2012 February 1; 6(1): 2232.

 もちろん名前からして、Zanarini さんがリーダーだろう。ざっとこんなことらしい。Zanarini 先生と Frankenburg 先生が2007年に、ボーダーラインの病理のエッセンスとして、Hyperbolic temperament による内的な心の痛みが特徴であると説いた。(Zanarini MC, Frankenburg FR. The essential nature of borderline psychopathology. Journal of Personality Disorders. 2007; 21:518–535.)ちなみにhyperbolic は訳せない。双曲線、とか誇張された、という意味だが、「Hyperbolic temperament 誇張気質」となると、とんでもない語訳扱いされるだろう。そこでHTとしておこう。(どうやらこの概念、まだ誰も日本で紹介されていないのか、「hyperbolic, 境界」でも「hyperbolic, ボーダーライン」でも何もヒットしないので、誰かが訳したものを使うことができない。

ともかくもこの2012年の論文を読むと、結局こういうことが書いてある。BPDに関しては気質かそれとも成育環境(もちろんそこには幼少時のトラウマも含まれることになる)かということが言われてきたが、結局両方、ということが分かってきている。そしてこのHTとしてどのように説明されているかと言うと、以下の通りだ。「容易にネガティブな感情を体験し、そして容易に立腹し、他者にいかに自分の内的な苦しみが大きいかを訴えることで、持続的に生じている怒りumbrage を沈めようとすること“easily take offense and to try to manage the resulting sense of perpetual umbrage by persistently insisting that others pay attention to the enormity of one's inner pain” (Zanarini & Frankenburg, 2007, p. 520).

ちなみになぜここで umbrage アンブリッジ、怒りという言葉を使っているかは不明である。 辞書を引かないとわからなかった。