2014年5月5日月曜日

現代における夢理論(2)

 フォサーギ先生の理論を一言でいうと、「夢は情報の組織化 organizing information と、情動の調節regulating affect である」ということだ。またそれは脳科学、認知科学、精神分析その他の知見を総合したときにそうなると主張する。そしてこの考え方は、「夢は願望充足であり、欲動の発散である」といったフロイトの主張とはずいぶん違うことになる。
 ちなみにフォサーギ先生はコフートの影響を強く受けているわけであるが、そのコフートは、夢には自己が断片化の危機にあるときに、それを修復する意味があるという。コフート派のストロローとアトウッドは、夢は心理的な構造の保護者である、という。フォサーギ先生の夢理論も、これらの見解とおおむね歩調を合わせているということができる。
 ところで夢をある種の心の保護機能とみなす傾向については、精神分析理論に限らず、夢に関する様々な見解を唱える人々の全体的な傾向といえるだろう。なぜならおよそすべての生物は眠り、多くの高等生物でREM睡眠に相当する部分を体験しているらしいからだ。そしてそれはこの時期の独特の脳波の所見から推定されるのである。そこで脳科学者たちは、夢を一種の情報の統合を行い、それ自身が適応的な意味を持つと考える。このことはREM睡眠を妨害するとその後にリバウンド現象がみられることからも推察される。
 フォサーギ先生は睡眠、覚醒時の両方にかかわってくる二つの情報処理のモードを区別する。一つは感覚的イメージ的、もう一つは言語的なモードであるという。前者は情緒的な内容を含み、後者はより理論的な内容だ。そしてこの両方を用いてデータを記憶に向かってプロセスし、構成し、統合するというわけである。
 
そのほか注目したいフォサーギ先生の主張としては、起きている間の私たちの思考は明晰的 explicitly、ないしは被明晰的 implicitly に進行するとあるが、ここで前者を「意識的」、後者を「非意識的 nonconscious」と表現していることだ。つまり後者を無意識 unconscious とは区別している。ここら辺は重要だ。またREMは覚醒時にも生じるといっている。たとえば後者は白日夢などがその例であるという。