2014年5月6日火曜日

現代における夢理論(3)

ところでフォサーギさんの説によれば夢はもっぱら情報の整理ばかりをしているようであるが、新しく生まれてくる思考development of newly emergent psychic organizationに関係していると言及してはいる。そして先生はご自分の説を例証するために、ある事例を提示する。
フォサーギ先生のある患者さんは、先生に対する疑い深さを時々口に出していた。先生はあまり信用できない、というのだ。ところがこの患者さんが報告したある夢の中では、彼がフォサーギ先生のうちの地下室にいて、そこに入り込んだ男性に「あなたは幸運ですね。フォサーギ先生はとてもいい先生ですよ」と告げていだ。
フォサーギ先生はこの患者の報告した夢について説明する。典型的には、分析家への不信は前景にあるものだ。しかし背景にあるのは治療者に対する理想化なのである。理想化された、あるいは幼いころに追及していた両親像を治療者が備えているからこそ、治療は継続されているのだという。それをこの夢はあらわしているのだ、と。
 ところでフォサーギ先生のこの夢について聞いたあるクライニアンの分析家は、「夢の中で自分の中の羨望への自覚と葛藤を起こしているのではないか?」と問うたという。しかしこれに対して先生は「羨望との葛藤、というよりは、夢自身はとても心地よく、自分の理想化された自己対象との体験に対応したものであった」と主張する。そして「このようにして夢とは心の構造を維持し、修正するのである。」と続ける。しかし夢の内容が「羨望との葛藤」となることもある場合だってあるし、そうなると夢が「維持し修正する」ことにはつながらないということになろう、というのが私の心に生じる疑問である。まあ、私の理論はともかく。
維持し修復する」ことに関して、フォサーギ先生はフロイトの「イルマの注射」の夢を例に挙げている。この夢では、フロイトは昼間にイルマという患者に対する治療について同僚からいろいろ批判をされたが、夢の中ではそれらの批判を逆に批判するという内容であるという。これをself-righting (自己修復)というような英語で説明している。(self-righting boat というと「セルフライティング[転覆防止]構造のボート」というそうだ。)
ところで疑問としてわくのは、たとえば悪夢とか、トラウマのフラッシュバックに近い夢はどうなるんだろうか?ということだ。するとそれに直接関連しているかは不明だが、次のような記述も行っている。