2013年10月10日木曜日

欧米の解離治療は進んでいるのか?(1)

うーん、この問題は頭が痛いなあ。よくわからない。解離研究と言えば米国だが、アメリカ人の書いた本であまりためになったという実感がない。「構造的解離理論」もとても難解で、飲み込めていない。(一応翻訳者の一人です、はい。)こんなことではいけないではないか?別に隠すことはないが、私は人の書いた本を読むのが大嫌いなのである。(自分が書いた本はほとんど開いたことがない。)
ということでしばらくは、四書五経を読むつもりで観念して、Guidelines for Treating Dissociative Identity Disorder in Adults, third revision (成人DIDの治療ガイドライン、第3版)という論文を読む。これはすごく由緒正しい論文だ。何しろ著者を聞いて驚いてはいけない。International Society for The study of Trauma and Dissociation (“ISSTD”)なのだ。つまり「国際解離学会」そのものが著者ってどういうこと?つまりこの国際的な学会がガイドラインを作ることを決定して、内部でエキスパートを選んで部会を立ち上げ、書き上げたガイドラインということだ。つまりこれ以上のお墨付きはないことになる。それにこれが書かれたのは2010年だし。ちなみにこの論文は、ISSTDの学会誌であるthe Journal of Trauma and Dissociation のサイトで無料でダウンロードできる。http://www.isst-d.org/downloads/2011AdultTreatmentGuidelinesSummary.pdf

始めにDIDの成因についての理論的なことが改訂ある。ここはあまり問題ない。例外を除いて幼少時のトラウマが原因である、と書いてある。解離は幼少時のトラウマに対する防衛であり、それも闘争・逃避反応のような類のものであり、精神力動的な概念である防衛とは異なる、と断り書きがしてある。
ちなみにこのDIDの成因の説として構造的解離理論が登場してくるが、これはある意味では当然のことと言えるだろう。この理論の提唱者の一人であるVan der Hart先生のこの学会での位置を物語っているのだろう。