2011年8月19日金曜日

「母親病」とは何か?(7)


ということでいよいよ本題である母娘の問題に入るのであるが、やはりこの問題、私はよくわかっていない。当たり前のことだが自分に引き付けて考えられない以上、どうもピンとこない。ただ患者さんたちからはかなりたくさん聞いているので、それからいろいろ想像することになる。
ちなみに私は母息子間の母親病と、母娘間のそれが全く別物とは思わない。そもそも母親病の一つの原因は、母親の本能に根差した情の深さにある。ただ母息子と母娘では、その色合いがかなり異なるということである。
私が母娘間の関係に興味を持つのは、何といっても患者さんの中にその関係で悩む人が多いからだ。いや、悩むというよりは激しい憎しみをどうすることもできないということだろう。彼女たちは母親に対する激しい感情に悩まされる。できればかかわりを持ちたくないのだろうが、必ずしもそうはいかない。どちらかといえば母親からの予測不能な連絡、電話や突然の訪問に翻弄されると訴える。娘の側としては、母親とかかわりを持たなくて済むのであればそれに越したことはないと思うものの、同居していたり、経済的に依存していたりするとそうもいかない。
彼女たちに共通にみられるのはなんだろうか?ある娘は時々連絡をしてくる母親の「お母さんはあなたのことを一番わかっているのよ。どうして素直に聞けないの。」というメッセージにたまらない憤りを感じるという。自分はあなたの人生のことを知っていて、今でもそれを支配しようとしているという雰囲気。そしてそこには実際に小さくて無力な子供にされてしまうことへの恐ろしさが伴っているのだろう。その意味では母息子の関係に共通している。