このじゃれ合いが持つ生物学的な意義については様々に取りざたされているが、Siviy などの論文によると特に早期の母子関係がこの遊びに深く関係することがわかる。そこで重視すべきなのは、親との身体的な接触である。いわゆる LG (licking and grooming,ぺろぺろ舐められ、毛づくろいをしてもらうこと)が高値のラットは、その後は怖れが少なく、新しい環境での探索をし、驚愕反応も弱いという。そして15分ほど母親から分離されたラットは不安が少ないという。ただしラットは LG が低ければ遊びが増すという研究もあり、このLGと遊びの関係についての研究は相当ややこしい。(ちなみにラットの母親からの分離がなぜ不安を軽減するかについては、結局私自身がその意味をつかめていない。) また中枢神経興奮薬(amphetamin, methylphenidate ) などは遊びを抑制するという。そしてそれは遊びの際にはストレスに関係するノルエピネフリンが低下していなくてはならないからだ。要するに交感神経が興奮するような非常時には遊ぶどころではないというわけである。 結論としては、じゃれ合いは前頭葉、線条体、扁桃体のそれぞれが協調して働くことでじゃれ合いが生まれるということ。そして幼少時から遊ぶことが出来るということは刻々と移り変わる社会的、情動的、認知的なランドスケープを生き抜くために重要である、とのべて Vanderschuren & Trezza 2014)の論文を挙げている。RTPは社会性を身に着ける上で非常に功利的な手段らしいのである。