三番目はスキゾイドPDについてである。DSM-5の近年の自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)についての研究が進むにつれ、それとスキゾイドPDのオーバーラップの問題が多く論じられている。言うまでもなくASDは発達障害に数えられ、PDとは異質のものとして扱われているが、第二軸の定義である「パターンは安定し、長期にわたって持続し、その始まりは遅くとも思春期や早期成人期にさかのぼることができる。」ましてや幼少時にさかのぼるとしたら、発達障害は第二軸に入らないこと自体が矛盾するとも論じられている(Lugnegård, T,et al, 2012)。その意味でDSM-5で多軸診断が廃止されたのも納得できよう。
Lugnegård, T, Hallerbäck,MU, Gillberg, C. (2012)
Personality disorders and autism spectrum disorders: what are the connections?
Comprehensive Psychiatry.v53: 333-340.
ともかくもこの研究では、ASDの基準を満たす54名の早期青年期の人々を対象にして研究した。すると14人がスキゾイドPDを、7名が回避性PDを10名がOCPD(強迫性PD)、1名がスキゾタイパルPDを満たし、ボーダーライン、自己愛、依存性、反社会性、演技性PDを満たした人はいなかったという。つまりASDの中でスキゾイドPDの診断基準を満たす人々が一番多いということになる。
この件に関しての私の考えは、それぞれ由来の違った二つの障害(一方は統合失調症に近縁のものとして出発したスキゾイドPD、もう一方は深刻な自閉症ほどではないものの、その軽症型として見出されるようになってきたアスペルガー等のASD)が徐々に接近し、臨床的には区別がつかなくなっている状態といえる。さらには個人的には、従来考えられていたスキゾイドPDの大部分が実はASDを見ていたのではないかと考える。人に関心がない、感情を欠いた、スタートレックのミスター・スポックのようなスキゾイドは、実はきわめて稀少ということである。一見スキゾイドPDに見える人々は、実は物や秩序により大きな関心を持ち、人は複雑でわずらわしいためにあまりかかわりを持とうとしない (でも同時にすごくさびしがり屋の)ASDが大半ではないか、と考えるのである。