ここでWHOのICD-11に関する公式ホームページの記載をもとに、CPTSDの診断基準について検討してみる。
1) 情動調節に関する深刻で広範な障害。severe and pervasive problems in affect regulation;
2) 自分自身が卑小で打ちひしがれ、無価値であるという信念と、それに伴う深刻で広範な恥の感情。persistent beliefs about oneself as diminished, defeated or worthless, accompanied by deep and pervasive feelings of shame, guilt or failure related to the traumatic event
3) 関係性を維持し、誰かと近しい関係にあるという感覚を持つことの困難さ。 persistent difficulties in sustaining relationships and in feeling close to others.
2) 自分自身が卑小で打ちひしがれ、無価値であるという信念と、それに伴う深刻で広範な恥の感情。persistent beliefs about oneself as diminished, defeated or worthless, accompanied by deep and pervasive feelings of shame, guilt or failure related to the traumatic event
3) 関係性を維持し、誰かと近しい関係にあるという感覚を持つことの困難さ。 persistent difficulties in sustaining relationships and in feeling close to others.
ここで注意を惹くのはCPTSDの原因としては、まず拷問や奴隷の状況が記載されており、小児期のトラウマはその次に登場している点であろう。つまり CPTSD は成人のトラウマによっても生じることになるのだ。さらにCPTSDの関連論文を読むと次のようなことが書いてある。
CPTSDはPTSDとDSO(disturbances in self-organization 自己組織化の障害)との二つのコンポーネントからなるという。そしてこのDSOは上に帰した1)~3)の部分が相当するが、それらはより簡略化して、以下のように表現される。AD: affective dysregulation 情動の調整不全
NSC: negative self-concept 否定的な自己概念
DR disturbances in
relationships 関係性の障害
つまりDSOとはトラウマによりその人の感情や関係性や自己概念にかなり長期化する変化を被っているのであり、それは Herman が最初に提言したことでもある。
さて、最近は疾病概念が正当な構成概念 valid construct なのかをより厳密に問うが、ある研究(Brewin et al, 2017)では、CPTSDの人と、深刻なPTSDだけれどCPTSDではない、という人がはっきり異なるグループの患者として存在することが分かったという。結局PTSDを満たす人とCPTSDを満たす人の違いについていろいろな研究がDSM-5の発刊された2013年以後も行われた結果として、このCPTSDがICD-11では正式の採用となったようである。
Thanos Karatzias, et al(2018) PTSD and Complex PTSD:ICD
updates on concept and measurement in the UK,USA, Germany and Lithuania
European Journal of Psychotraumatology,Eur J
Psychotraumatol. 2017; 8(sup7): 1418103.