2025年9月6日土曜日

●甘え再考 1

 暮れのある学会のシンポでの発表のために、甘えについての考えを少しまとめておかなくてはならない。ちなみに私の最新の甘えに関する論文は、「母子関係における養育観の二タイプ」と言うもので、高山敬太・南部広孝編(2024)<日本型教育>再考 学びの文化の国際展開は可能か. 京都大学学術出版会の一章として発表したものだ。しかし大方の論旨はだいぶ忘れてしまったので、少し思い出すところから始めたい。 そもそも子育てには日本型と西欧型の二つがあるという単純化された考えを提示したことに始まる。要するに甘え(一次的愛)への養育者の能動的な反応性の高さが日本型、低さが西欧型というわけだ。要するに赤ちゃんがおっぱいを欲しがっている時に先取りするのが日本型、泣いて欲しがるという形で赤ちゃんが自分の欲求の表現を待つというのが西欧型と言うわけだ。実はこのことは成人のコミュ二ケーションにもみられるが、ここはひとつ変わった例。 32歳でパリにわたって初めに印象深かったことがある。病院で学習内容や病歴を書くために支給された紙が、真っ白で、罫線さえ引いていないのだ。一番上に病院のロゴマークが入っているだけ。あとは自分で使い方を決めよ、というわけだ。これだと字がドンドン曲がって行ってしまうじゃないか。日本の記録用紙ならうまい具合に罫線が入っていて、字が曲がるのを防いでくれるのに、何と不親切な‥…と思った。ちなみにそのあと渡米したら、アメリカでの記録用紙はどこでも一律にイエローバッド。どこに行っても例の黄色い紙の束しか売っていない。まあ罫線が入っているだけましたが、文房具でさえ、こちらを甘やかしてくれない。ごく単純化して言えば、日本は甘えを促進するが、西欧はそれをしてくれないし、そうすることはよろしくないというような雰囲気さえあるのだ。