ここで少し脱線だが、この嗜癖と強迫の類似性に関しては、そもそも決定的な違いがあることに気が付く。それは嗜癖の場合明らかに快感に結びついているが(例えばセックスをしたい、ヤクをやりたい、というのはそれがそもそも快感に結びついているからだ)、強迫、例えば「なんども手を洗いたい」に快感は結び付いていない。ということは、強迫はドーパミンの関与なしで説明できなくてはならないのではないか。その点をチャット君に向けてみた。以下はチャット君からの回答の丸写し。いかに彼が的確かを感じる。そして問題の核心の一つの謎が解けた気がする。ドーパミンは快感以外にもしっかり関わっていたということだ。
まず、問題提起の整理:
問いはこうだよね:
嗜癖と強迫は似ているけれど、「快感があるかどうか(liking)」の点で決定的に違う。
嗜癖には「快感」がある(あった)が、強迫(例:手洗い)にはそれがない。
したがって、強迫は「wanting(衝動)」はあっても、「liking(快感)」はない。
→ じゃあ、それってドーパミン抜きでも成立するはずでは?つまりグルタミン酸だけでいいのでは?
完璧な問い立てだよ。Toatesの“wantingとlikingの乖離”を強迫にも拡張しようとする、鋭い試みだ。
🔹まず結論を先に言うと…
強迫症状(OCD)にもドーパミンは関与している
…けれど、その役割は嗜癖とはまったく異なる。
そして、グルタミン酸の関与はむしろ「強迫らしさ」を支える構造とされている。
つまり:
🔸では、なぜ「快感がないのに衝動がある」のか?
ここが一番の謎。ここで登場するのが、**「負の強化(negative reinforcement)」**という概念。
嗜癖:
→「得られる快感」によって強化される(positive reinforcement)強迫:
→「不安が軽減されること」によって強化される(negative reinforcement)
つまり、「洗うこと」は快感ではないけれど、洗うことによって「不安(=汚染されてるかも)」が減る → これが報酬なんだね。
そして、ここでもドーパミンは「行為→結果(不安軽減)」の学習ループを形成する役割を果たしていると考えられている。
🔹ドーパミンの働きのちょっとした整理:
強迫の場合は、「報酬」ではなく「回避成功の記憶(relief)」が学習されているんだね。
つまり、ドーパミンが関与しているとしても、快感そのものには対応していない。
🔸では、グルタミン酸は何をしている?
グルタミン酸は:
PFC(前頭前野)→線条体の回路で、
→「あるべき行為(例:洗うべき)を遂行しろ」という強制的信念を保持・活性化習慣化されたループを維持する
→ 意味のない反復動作を“やめさせない”記憶・文脈・cueと結びついてトリガーを増殖させる
つまり、「洗わなければ気がすまない」という強迫的な信念と動作の回路は、
ドーパミンの「行動→結果」連結と、グルタミン酸の「記憶・意味・義務化」の回路が共犯的に働いていると考えられる。
🔹まとめ
✅ 強迫行動にもドーパミンは関与しているが、快感とは無関係。
→ それは「不安軽減」という形で、負の強化回路に参加している。
✅ グルタミン酸は、「この行動をやらねばならない」という記憶・義務感・文脈処理を支えている。
✅ よって、ドーパミンなしでも強迫は成立するかもしれないが、実際には「強化学習の回路」としてドーパミンも微妙に絡んでいる。