2025年7月22日火曜日

FNDの世界 5

 ということで改めて、「ヒステリー(変換症、FND)の精神科からみた歴史」の書き起こし。

はじめに

現在FNDという呼称に統一されつつある病態ないしは疾患の精神医学における歴史をひも解く場合、やはりヒステリーにさかのぼる事になる。問題は本書の執筆を担当されている主として神経学の専門家とは異なる切り口からこのテーマについて論じることが出来るだろうか、ということである。まずこのテーマが脚光を浴びるようになった一つのきっかけとしては、2013年発刊のDSM-5における本症(変換症/転換性障害)の診断基準の変化であると考えられる(園生、2020)。園生はその変化として、心理的要因の特定が不要となり、代わりに神経学的に説明できない症候、すなわち陽性症状の存在が必須となったことが挙げられる、とある。そして「ヒステリーの診断は精神科医が行うのではなく、脳神経内科医の手にゆだねられたことを意味する・・・」と述べる。

この点については説明が必要となるだろう。DSM-5には以下のように書かれている。B.その症状と、認められる神経疾患または医学的疾患とが適合しないことを裏付ける臨床的所見がある。Clinical findings provide evidence of incompatibility between the symptoms and recognized neurological or medical conditions.

脊椎脊髄ジャーナル 心因性疾患(変換症/転換性障害;ヒステリー)の現在 2020年 

園生雅弘(2020)特集にあたって.脊椎脊髄ジャーナル vol.33 No 3 p177)

そしてここは少し不思議だが診察の結果が陽性だったり陰性だったりするというような「診察所見の例としては、下記のものがある」は原文では、there are dozens of examples of such “positive” examination findings.となっていて、要するに「そのような陽性検査所見」とある。なぜ日本語でこの「陽性の」という部分が訳されていないのかがよく分からない。(実はこれを確かめるために、DSM5-TRの日本語版を2万円出して購入したのだ。トホホ―。)