2025年7月10日木曜日

週一回 その24

 海外における面接の頻度や治癒機序に関する理論 

 ここまでで論じた我が国における「コンセンサス」(「週一回では、治癒機序としての転移解釈を用いる治療は難しい」)は海外での精神分析の議論にも同様に見られるのであろうか?それがこの章で論じるべきテーマである。

 まずは我が国の「コンセンサス」の議論の前提となる「ヒアアンドナウの転移解釈」に関する議論の歴史について触れる必要がある。米国においても Strachey により提唱された転移解釈(変容惹起性解釈)の重要性についての議論は、Merton Gill のヒアアンドナウの転移解釈の議論に引き継がれることで「新たな活力を得た」(Wallerstein p.700)と言われる。そしてよく知られる1960年代からのMenninger Clinic における精神療法リサーチプログラム(以下「PRP」)においても「ヒアアンドナウの転移解釈が絶対的に主要な absolutely primary 技法である」 という Strachey および Gill の提言は、一種の「信条 credo」として謡われていたという(Wallerstein p55)。
  しかしこのPRPの研究の結果としてヒアアンドナウの転移解釈の絶対性ということは証明されず、治療はケースによりそれぞれ独自であり、解釈による洞察以外にも様々な支持的な要素が入り混じった複雑なプロセスであるということが示されたという。そしてPRPの研究結果の一つのエッセンスは「支持的治療は、高度に表出的な治療や探索的な治療と同じくらい長持ちする構造的な変化をもたらした」(Wallerstein, Gabbard)ということだったのである。


(以下略)