なお精神分析的精神療法の介入の仕方や頻度に関しては、国際精神分析協会や米国精神分析協会のホームページが最近の動向を反映していると理解すべきであろう。 米国精神分析協会(APsA)のホームページには以下のような記載が見られる。 「精神分析的精神療法の治療方法は精神分析の理論と技法に基づく。主たる相違点は、患者と分析家の会う頻度がより低く、時には週に一度しか会わない。精神分析と同様、セッションの頻度は患者のニーズに応じてカスタマイズされなくてはならない。もう一つの相違点は、患者は通常はカウチを用いず対面で行うことである。(令和7年5月20日にHPより転記https://apsa.org/about-psychoanalysis/#toggle-id-2) また国際精神分析協会(IPA)のホームページには、以下のような記載がある。 「精神分析的精神療法は通常はより低い頻度(週に1,2セッション)で、対面法で行う。[精神分析とは異なり]治療の目標はしばしば特定の問題(例えば関係性や仕事上の困難さ)抑うつ、不安症の解決に焦点づけられる。もちろん精神分析と同様に転移や逆転移は生じるが、それらはしばしば解釈されることなく背景に置かれ、その代わりに患者の人生にかかわる問題がより直接的に扱われる。時には患者と治療者は後の段階になって彼らの治療を深めるためにより頻回の精神分析に取り組むことがある。」 このように国際精神分析協会も米国精神分析協会も、そして米国心理学協会も、それらのホームページでうたっているのは、精神分析と精神療法がいかに類似していることである。「精神分析的精神療法は精神分析と極めて近い。つまり自由連想が用いられ、無意識を重視し、患者・治療者関係を重視することである。」(米国心理学協会のHPより)(岡野 2023で引用)。 海外の、特に英語圏に見られる議論の傾向をここでまとめよう。そこでは精神分析と精神療法が類似していることが強調され、時には精神分析的療法の中の構成要素として精神分析と精神分析的精神療法が挙げられる。このうち後者は表出的精神療法と支持的精神療法に分けられるが、それらは明確に分類されるというよりは、表出的―支持的スペクトラム上の技法のどれがより中心的に用いられるかによる相対的な違いとして概念化されている。 そして何よりも注目すべきなのは、代表的な精神分析機関のホームページを見る限りは精神分析的精神療法としては少ない場合には週一回という言及がなされるようになっているということである。ここに至って週一回は分析的ではないという制限は事実上取り払われた(あるいは最初から存在しなかった)ということが出来るであろう。