2025年4月19日土曜日

遊びと愛着 2

 ラットがRTPの時あげる声は超音波であり、もちろん人の耳には聞こえない。(ちなみに social rough and tumble play RTP) には「乱闘遊び」などの訳もあるようだが、日本語の「じゃれ合い」が一番ぴったりくるのではないか。荻本快氏の論文(2014)によれば、RTPには定訳がないのでこの「乱闘遊び」という表現を使う、とある。ただしネットでじゃれ合いの英語表現を探すと playing around, horsing around と出てくるが、play around 等はむしろ「戯れる」という感じではないかと思う。「じゃれる」にはラフで手荒な要素が必ず入ってきて、その意味ではRTPとちょうど一致するという感じがする。)

荻本快(2014)幼児の自己制御を育む父子遊びの発達力動理論-介入プレイ観察による力動理論の構成 Educational Studies, 56 :81‐88. International Christian University.  この論文を読んでいくと、色々興味深いデータが出てくる。扁桃核にはキンドリング(燃え上がり)という現象があるが、それを起こしやすいラットだと遊びが多いという。しかしそれだけでなく、早期の母子関係が遊びに深く関係するらしい。母親からのLG (licking and grooming ぺろぺろ舐められ、毛づくろいをしてもらうこと)が高値のラットは、怖れが少なく、新しい環境での探索をし、驚愕反応も弱いという。ただし一日15分ほど母親から分離されたラットは、むしろ不安が少ないという。少しは母親から隔離される必要があるのだ。 ただしラットはLGが低ければ遊びが増すという研究もあり、このLGと遊びの関係についての研究は相当ややこしいらしい。 ところでこの論文に何度も出てくる pinning という表現。どうしてもよく分からないので、チャット君に聞いたらあっという間に教えてくれた。仰向けに組み伏せること。ちょうど何かをピン止めすること、というニュアンスだ。じゃれ合いにはしばしばこの pinning という行動が伴うが、それはおそらくセックスに関係し、その意味ではじゃれ合いは攻撃性と性行動の両方の準備の意味がある可能性があるらしい。 もう一つ重要な情報。中枢神経興奮薬(amphetamin, methylphenidate ) などは遊びを抑制するが、それは遊びの際のノルエピネフリンの量の低減が抑えられるからだという。なるほど、そういうものか。逆に言えば遊びと緊張や興奮とはある意味で対置的ということかもしれない。