2025年1月24日金曜日

統合論と「解離能」 14

 さてこのようなポールセンの臨床的な記述について述べる。この引用の前に、「色々なパーツが抱えていたBASK要素の処理が済んで自己に吸収されたので、子供のパーツはキム本人から解離している必要がなくなったのだ。」とある。つまり患者の中に多くいた、「パーツ」のそれぞれが抱えたトラウマは既に処理されていたことになる。これは一言でサラッと言えるほど簡単なことではない。

しかしトラウマの処理はそれほど簡単にできるのだろうか?実際トラウマの処理には何年もかかる場合がある。それをいとも簡単にEMDR何セッションかで次々と処理していくという風に書いてあるが、これは非常に誤解を招くのではないか。


統合を目指さない杉山先生の自我状態療法


それに比べて杉山先生の提唱されるDIDの治療方針には大変納得出来る。先生はそのテキスト「発達性トラウマと複雑性PTSDの治療」の中で「平和共存、みんな大切な仲間』というメッセージが一番大事なキーワードとなる。」(p.64)

「全パーツの記憶がつなげられるようになれば、人格の統合は必要ない。皆でわいわいと相談をしながら生きて行けばよく、適材適所で対処することにより、むしろ高い能力を発揮したりする。」(p.64)

杉山先生の記述を読むと、やはりこの世界は統合をめぐって大きく意見が分かれていることに改めて気づかされる。