解離の治療理論における統合という概念
ここからは統合を目指す理論を中心にいくつかを紹介したい。彼らの理論がどの程度臨床的な現実と符合するかについて検討することが目的である。
まず明確に統合を目指すUSPT理論(小栗、ら)新谷 宏伸 (著, 編集), 十寺 智子 (著), 小栗 康平 (著)(2020)USPT入門 解離性障害の新しい治療法 -タッピングによる潜在意識下人格の統合. 星和書店を挙げたい。ちなみにUSPTとは Unification of Subconscious Personalities by Tapping THerapy タッピングによる潜在意識化人格の統合のことを指す。この療法は「DIDや内在性解離において別人格を表出させ、その場で融合・統合をすることができる治療法。」(p.1) としてまず位置づけられている。そして「短時間で人格を統合し治癒させ得る方法で、患者さんのためだけでなく医療経済的にも非常に優れているといえる。」(p.1)
彼らの手法を見てみよう。まずEMDRの代わりに両膝の交互タッピングで人格変換を手早く行い、「背部のタッピング」で人格を統合するのがUSPTの原型である。」という。そしてタッピングの部位は手でも肩でもいいが膝は女性の抵抗が一番少ないという。(p.39)ともかくもまず主人格にタッピングを行ない、子ども人格から呼び出す。(ちなみに女性が両膝のタッピングが一番抵抗が少ないという記述は私には少し意外であった。)
もし別人格が出てこないとしたら、「患者さんが本当の意味で治りたいと思っていないからである。辛いことは封印しておきたい、別人格に任せておきたいのである」。(p. 50 )とも書かれている。
そして子供の人格が出たら、辛い時の記憶を語ってもらい、「離れていると辛い気持ちを一人で抱えて辛いでしょう。一つになると辛さが流せるし、あなたの辛さに耐えた強さが入るから、しっかりした〇〇さんになるの。」と説得する。(p. 47 ) 主人格からもそれを促してもらう。