2024年9月12日木曜日

統合論と「解離能」10 

 さてなぜ統合する必要があるのかについて著者は次のように述べる。「過去の辛さを別の人格に背負わせることで、その記憶も感情も時間とともに風化しなくなってかえって辛くなっている」「大人になったら辛いことから逃げないで対処することをしっぱりと認識してもらう」「それさえ受け入れられれば、辛い過去の感情をその場で流すことが出来るのが、このUSPTの非常に大きな特徴である。」(p.31)そして人格の統合に抵抗を示す患者に対して次のように言う、とある。人格は決して消えることがない、と伝えて次のジグソ―パズルの比喩を用いる。少し長いが重要部分なので引用しよう。 「今のあなたの状態は、ばらばらになったジグソーパズルです。そのままだと、過去の辛い感情が流れずにどんどんたまっていく一方なのです。ジグソーパズルがきちんと出来上がると、過去の感情が流せてとても楽になります。別人格はジグソーパズルのピースみたいなものだから、一つになっても消えるわけではないのです。その証拠に、いったん融合・統合した後でも、再解離してもといた別人格が出てくることは日常茶飯事です。(下線は岡野」(p.32) 小栗先生の本章の根幹部分は意外とあっさりしたものである。それは「統合により辛い過去の感情が流されて楽になる」ということに尽きると言っていいであろう。ただその根拠についてはこの章では明確には触れられていない。 第5章は再び新谷医師の執筆であるが、最初にUSPTを行なう際の説明として、「膝と肩に触れる治療であること」とともに「現時点ではUSPTにエビデンスがないこと」を挙げていることだ。これはとても率直な態度であるとも言える(率直過ぎて少し肩透かし感もある)。