2024年8月2日金曜日

解離性障害 Q&A 推敲 3

③解離性障害の治療には、どのようなものがありますか?

 解離性障害の治療としてはなによりも、専門家により正しい理解に基づいたアセスメントと診断を受けることが大切です。解離性障害は決してその診断が難しかったり特別な専門的な知識を必要としているわけではありません。その意味ではほかの精神疾患と同じです。ただし治療者の側に解離性障害という診断を下すことに抵抗があったり、その疾患自体を受け入れがたいということがいまだに起きています。その意味では非常に特殊な精神疾患と言えるかもしれません。そのために患者さんの中には症状の話をしても怪訝そうな顔をされ、「誰に話してもわかってもらえなかった」という体験をする人が少なくありません。治療者がそれを正しく理解し、説明することはそれ自体が不安の軽減や将来への希望に繋がります。
 いったん精神科の外来への受診が開始され、その病状に対する正しい診断が下された後には、現在の解離症状が継続したり悪化させている要因が取り除かれる必要があります。現在の居住環境や学校、職場でのストレス因が軽減されることが図られる一方ではカウンセリング等により当人の体験している解離症状についての聞き取りや理解が治療の決め手となることが少なくありません。なお現在解離症状そのものに対して効果を発揮する薬物はありませんが、うつ病や不安障害などの問題を同時に抱えている人にはそれらの症状に対する薬物治療なども行われます。
 特にDIDについて言えることですが、治療の主体は何といってもカウンセリング(精神療法)です。カウンセラーを前にして、解離されている心の部分が表現されていくことが患者さんにとってとても大切です。患者さんはそれまで自分の心を自由に表現できないような環境にいた為に、解離の症状が長引いていた可能性があります。いったん自由な自己表現が出来るような他者との関係を持つことで、解離の症状は徐々に改善していく傾向にあります。その最初のステップがカウンセリングなのです。