2024年8月1日木曜日

解離性障害 Q&A 推敲 2

 ②解離性障害にはどのような種類がありますか?

 解離性障害のいわば基本形としてあげられるのが、解離性健忘です。これはある出来事についての記憶(いわゆるエピソード記憶)が後になって思い出せないという状態です。特に大きな精神的なトラウマが生じた場合には、それまでに解離性障害の症状として診断や治療をうけたりしたことのない人でもこの解離性健忘が生じる可能性があります。たとえば震災や交通事故、性加害の犠牲者の一部にはそのエピソードの一部を記憶していないということがあります。また解離性健忘はいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の一部として生じることもあります。解離性障害にはいくつかありますが、いわゆる離人性障害を除いては、この解離性健忘が複雑な形で生じ、あるいは組み合わされることが一般的です。
 解離性障害の中で最も深刻で、精神科の受診のきっかけとなるのはいわゆるDID(解離性同一性障害、昔の多重人格障害)と解離性遁走です。DIDではいくつかの異なる人格が形成され、それぞれが自律的に行動を起こします。そしてしばしばお互いの行動を記憶していないということが生じ、そのことで自分自身も周囲の人々も混乱します。このDIDの背景には、幼少時の長期にわたるストレス体験が考えられます。というのもDIDの患者の多くは、すでに幼少時に解離傾向や別人格の存在がうかがわれるのが一般的だからです。ただし幼少時の虐待などの経歴が明確に見られない場合もあり、この成立の過程にはまだわかっていないことが少なくありません。DIDはこれまでにドラマや小説のテーマとして、やや誇張された形で扱われてきました。
 他方の解離性遁走は一定期間の間自分のアイデンティティを失って遠方をさまようという特徴ある症状を示します。我に返り、あるいは保護されて帰宅した後も、それまでの自分の来歴の一部ないしは全部を思い出せないということが多く、時にはその記憶が戻らないままに終わってしまうことも少なくありません。

 以上述べたもの以外に、解離性障害の中には離人感・現実感喪失症が掲げられています。これは自分の体や心、あるいは外界が膜を被ったようで自然なものとして実感されない状態で、人生のある時点で突然生じ、その後長くその人を苦しめる可能性があります。またこの障害は解離性健忘を伴っていないことも少なくありません。また離人感・現実感喪失症は、他の解離性障害の一部の症状としても、あるいはうつ病の症状としても生じることがあります。

 これ以外に従来転換性障害、身体化障害などと呼ばれていたものも、分類によってはこの解離性障害の中に入ってきます。突然足に力が入らなくなったり、耳が聞こえなくなったり、急に言葉が出なくなったり、という症状が比較的多く聞かれます。これらの症状も、多くはトラウマやストレスをきっかけとして突然生じたり消えたりする傾向にあります。