④家族や友人はどのようなサポートをすることがいいのでしょうか?
この問いは少し複雑な問題を含んでいます。家族や友人による障害の理解が大切であることは言うまでもありません。しかし同居中の家族の存在そのものがストレスとなったり、解離性障害を悪化させたりしている可能性があります。場合によっては当人を原家族から救い出すための第三者の存在が不可欠であったりします。しかしここでは家族や友人がご本人の問題を理解し、援助する能力や立場にあることを想定しましょう。
当人が早くから解離症状を自覚している場合も少なくありません。しかしそれを周囲に伝えることに抵抗を感じることが非常に多いようです。特にそれが幼少時からの家庭環境に根差している場合、親に自分の心や体に起きていることを伝え、分かってもらうという体験を持たず、むしろそれを秘密にしておく傾向があります。また学校や職場でも、周囲からおかしな人と思われるのではないかという懸念から、症状を隠す傾向もあり、そのためこの障害の同定がより難しくなります。
しかし他方では周囲が異変に気が付き、時には解離性障害についての知識を持つ友人や同僚が、当人にその可能性について伝え、場合によっては受診を勧めることで治療が始まる場合もあります。
当人の過ごす学校や職場には、解離症状が起きた場合にどのように対処すべきかについて伝えることがしばしば助けとなります。しばらく朦朧となったり、失神したりした場合にも、すぐに救急車を呼ぶのではなく、しばらく保健室などで様子を見守るなどの対応がもっとも適切であるということを知ってもらうことは重要でしょう。ただし解離性障害の存在を学校や職場に伝えることで、かえって奇異の目で見られたり差別的に扱われる危険性もあるので、誰に、どこまで伝えるかは難しい問題でもあります。しかし一番親しい友達、職場の上司などには伝えておくことがよい場合が少なくありません。
最後に解離症状はある意味では特殊な能力が発揮される事でもあるという認識は大切であることをお伝えします。そして病的な程度の解離症状は一般的な傾向としては、安全な環境では次第に軽減され、改善していく傾向にあることも付け加えさせていただきます。