2024年8月15日木曜日

男性の性被害 4

 米国における男性の性被害

初めに自己紹介をさせていただくならば、私が精神科医として自己形成を行った17年間(1987~2004)は米国で臨床を行ったため、男性の性被害のケースに初めて接したのもその時代でした。私はメニンガークリニックで精神分析のトレーニングを受けつつ,トピーカ市内の州立病院の思春期‐青年期男性病棟の入院患者を扱っていましたが、患者の中には男児に対する性加害を働いた患者さんも何人かいました。私は4,5人の男性の性加害のヒストリーを持つ患者と暫くグループ療法を行ったこともありました。かれらの一部は自らが性的トラウマを体験しており、性格的にはむしろ内気という印象を受けました。SSRIなどの抗うつ剤はリビドーが低下するという副作用があるため、それを使用することで彼らの性的なアクティングアウトをある程度は抑えたことができたことを記憶している。またいわゆる薬物による去勢と称して、毎週女性ホルモンの注射を行い、男性ホルモンのレベルがゼロにまで至った男性患者がいましたが、それでも病棟で隠れて性加害行為を続けていたことが発覚し、改めてこの問題の治療の難しさを実感した。グループ療法でも少し気を抜けば、メンバーたちが自分たちの性癖について語り出し、時には競い合うような雰囲気になりかねずに注意が必要だった。
 そして私にとって一番大きかったのは、性加害について私が持っていた誤解を取り除くことができたことです。例えば彼らの性的な志向が女児だけでなく、しばしば男児にも向けられること、そしてそれは彼らの同性愛傾向を必ずしも意味していなかったということです。現実には小児性愛者の大部分は異性愛者として分類し得ること、ただし彼らの多くは成人を性の対象とすることができず、したがって異性愛とも同性愛とも呼べないという場合が多いこと、などでした。