とある事情もあり、横井公一先生の「精神療法における希望の在り処」(岩崎学術出版社、2023年)をしばらく読ませていただく。 「はじめに」にはこの著作がまとまった経緯について書かれている。私にとって嬉しいのは、横井先生が私と全く同年(1982年)に精神科医となって研修を始めたということである。だから著者の伝える臨床を始めた環境やその後におかれた次代の流れなどをほぼ共有しているということだ。しかもDSM-Ⅲの流れをもろに受け、BPDの概念にもまれ、やがてトラウマへの関心を深める一方では、米国の関係精神分析に興味を見出し、それが自らの臨床指針を形成していくというプロセスは、私とほぼ同じなのだ。何と頼もしいことか!これから読み進めるのが非常に楽しみである。なお以下は本書の構成である。
イントロダクション オデュッセイアの亡霊
第一部 環境の中に居場所を見つけること
1 自分が自分で居られるために──摂食障害患者の治療から
2 ライ麦畑のつかまえ役──境界例患者の治療から
3 「あらかじめ失われた母」の病理
第二部 関係の中で外傷の意味を理解すること
4 関係理論からみた対象、主体、間主体性
5 外傷理論からみた解離性障害の治療
6 自己愛と攻撃性──怒りの向こう側にあるもの
第三部 「つながること」と「つなげること」
7 つながること、つなげること──関係論からみた意識と無意識
8 精神療法における希望の在り処について──反復強迫からの脱出をめぐって
9 「つながること」と「つなげること」と「つながりながら浮かび上がること」
コーダ
故郷への長い旅路
おわりに