②解離性障害にはどのような種類がありますか?
解離性障害のいわば基本形として挙げるべきなのが、解離性健忘です。これは過去の出来事についての記憶(いわゆるエピソード記憶)が思い出せないという状態で、特に精神的なストレスやトラウマが関係した出来事が対象になります。これは特に解離性障害として診断や治療をうけたりしたことのない人でも起き得ます。震災や事故、加害行為の犠牲になった人がそのエピソードの一部を記憶していないということがあります。これらの健忘はいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の一部として生じることもあります。解離性障害にはいくつかありますが、いわゆる離人性障害を除いては、この解離性健忘が複雑な形で生じ、あるいは組み合わされることが一般的です。
解離性障害の中で最も深刻で、精神科の受診のきっかけとなるのはいわゆるDID(解離性同一性障害、昔の多重人格障害)と解離性遁走です。DIDでは異なる人格が一人の人間の中で形成され、それぞれが自律的に行動を起こし、しばしばお互いの行動を記憶していないということが生じ、自分自身も周囲の人々も混乱します。その背景には幼少時の長期にわたるストレス体験が考えられます。なぜならDIDの患者の多くはすでに幼少時に解離傾向や別人格の萌芽が見られるのが一般的だからです。ただし幼少時の虐待などの経歴が明確に見られない場合もあり、この成立の過程にはまだわかっていないことが少なくありません。DIDの状態は比較的多く生じているようですが、過去にドラマや小説のテーマとして扱われてきました。
他方の解離性遁走は一定期間の間自分のアイデンティティを失って遠方をさまようという特徴ある症状を示します。我に帰り、あるいは保護されてなんとか帰宅した後も、それまでの自分の来歴を思い出せないということが生じ、時にはその記憶がその後も戻らないということが生じます。