2024年6月18日火曜日

PDの臨床教育 7

 ところでICD-11で5のかわりに採用された制縛性(強迫性)anankastia が入っているのも正直わからない。というより「アナンキャスティック」なんて表現、ムカ~シ医局の先輩が「彼はアナンカストだな」とつぶやいたので意味を調べたという記憶以外に思い出せない。それに「セイバクセイ」という表現もほとんど聞かない。だからせめて「強迫性 obsessive」くらいにしてくれないだろうか。DSMの精神病性 psychotic の代わりにこちらが選ばれた理由についてはある文献に書いてあった。それによるとこの精神病性は他のパーソナリティ障害とは一線を画し、むしろ統合失調症関連としてとらえるべきだから、というのである(Bach, et al, 2018)。それにICD-11では「パーソナリティ障害の深刻さ」のなかに現れるのだ。要するに精神病性は別格、その代わりに強迫性を入れよう、というのは私も賛成である。なぜなら強迫的な性格の人って結構周囲にいるような気がするからだ。

Bach B, First M. Application of the ICD-11 classification of personality disorders. BMC Psychiatry 2018.

しかしDSMの側では、制縛性(強迫性)を入れなかったのにもそれなりの理由があるという。制縛性(強迫性)は二つの要素に分かれ、一つは完璧主義(⇔脱抑制)、もう一つは保続(同じパターンを繰り返すこと)だが、保続は陰性感情の一つだというのだ。だから制縛性は思慮深さと陰性感情ですでに表現されているのだという。だから独立させる必要はないと考えたそうだ。しかし保続が陰性感情という説明は私には今ひとつピンとこないので、これについては意見は述べられない。

 そしてもう一つ、ICDではここにボーダーラインパターンなるものが加わるのだ。つまりボーダーさん的であることは一つの特性だと言いたいようである。これはよく分からない。だってBPDはカテゴリカルの典型ではないか、とも考えられるからだ。ただし確かに10のカテゴリーの中で一番研究され、また診断されることも多いのがこのボーダーラインだったわけで、これはぜひとも入れたいという気持ちもわかる。