2024年3月29日金曜日

Jeremy Holmes の本 7

 結局こういう事ではないか?Holmes 先生はこの愛着の問題を考えているうちにフリストンの自由エネルギー原理に出会い、それを取り込んだという順番ではなかっただろうか? そしてこのように考えると彼との心的な距離がものすごく近くなる。

第4章 自由エネルギーと精神病理

 この章も非常に示唆に富んでいる。まず不思議の国のアリスに登場する「赤の女王」の言葉が紹介される。「おなじ場所に留まるためには、力の限り走らねばならぬ。どこかほかの所に行きたければ、少なくともその二倍の速さで走らねばならぬ。It takes all the running you can do, to keep in the same place.」  まさにこの通りで、人は色々なストレスを体験しつつも、精神的にその場所に留まっているというフレキシビリティを発揮するためには大変なエネルギーを必要とするのだ。その上相手に何かの有益な示唆を与えようとするならば、(つまり「どこかほかの所に行きたければ」)さらにエネルギーがいるのだ。

 もしそのエネルギーが最初から少なければ、環境からの刺激により、あっという間にどこかに押し流されてしまう。そしてそこにトラウマの問題が絡んでくる(と少なくともHolmsは言う。)
 Holms によればフロイトが言ったprotective shiled 保護障壁の意味が重要になるという。これが壊されること、つまりは予測誤差が慢性的に最小化されない状態で痛みに満ちたnegative valence を生み出すような、最初の障壁の破壊が生じることがトラウマである。それを「外的世界のエントロピーと内なる生きた秩序が引き裂かれる」と言い表しているが、これが様々な精神病理を生む。。

 Holmes はまた、精神科医は予測誤差という言葉で精神疾患を定義付けようとしている、という。そしてPEMは二つの方向でうまくいかなくなる可能性がある。そのことはこれまでの論述からだいたい想像がつく。

1.感覚情報は正常なのに、単純化されたトップダウンモデルに上書きされる・・・精神病 現実はどんなに安全でも、自分は脅かされていると感じること(被害妄想)などが特徴となる。

2.感覚入力の精度が高すぎて世界の生成モデルがおろそかになる・・・自閉症
 ただしこの感覚入力は外部からだけでなく内受容についても起きる。彼らは内臓からの感覚にも極めて過剰な精度の重みづけを行なうという。
 ちなみに私の体験では、2.の自閉症においてもかなり1が生じているように思われる。人が優しくしてくれていても、自分に危害を加えるというメッセージを受けている気がするのだ。