2023年11月22日水曜日

カップルセラピー その7

 原則 ② 結婚後にお互いに及ぼし合う影響力は徐々に低減し「いくら言っても変わらない」部分だけがお互いに残る。そしてそれは「相手は決して自分を曲げない、過ちを認めない」という確信となる。(人の意見で変わると、「私が言っても変わらないのに。私のことを軽視しているからだ!」と被害的に受け取ることが多い。)

人が他人の話を聞き入れる、説得されるという現象には、実に様々な要素が絡んでくる。身近な人に勧められてもガンとして聞き入れない人が、尊敬する先達からの一言であっという間に動くのはどうしてだろう。あたかもその先達の意思は、外部からであっても自分の意思でもあるかのように従うということが起きるのだ。(日本国内での議論には動かないリーダーが、米国からの意向一つで簡単に動いてしまうという現象なども同じことである。)これは外部からの、他者からの声の威力という事だろうか。

ともあれ結婚生活は二人のこだわりを持った人間のすり合わせである。そのうちいくつかは「あ、それでもいいな。」とか「へえ、そうすることをどうして思いつかなかったんだろう?」という形で受け入れていくだろう。配偶者がいわゆるライフハックと呼ばれるようなやり方をしている時などは、別のやり方を見てさっそくまねるだろう。

私はある時ある人が漢字で入力した人の名前を、ファンクションキー「F7」で一発でカタカナに変換したのを見て、「エーっ」と思ったのを覚えている。そんな簡単な方法があるんだ、と知り、それからは活用しているわけだが、誰でも身近な人が明らかに物事によりよい対処をしていて、自分がそれをすぐにできるのであれば、相手のやり方を取り入れるだろう。そしてそういう事は新婚後早期に起きるのだろう。特に新婚時代はお互いに一目置いて理想化している場合が多いので、相手のやり方を取り入れるという事はより一層スムーズに行くはずだ。それに相手によって全く新しい世界に導き入れられたなら、そこでのやり方は相手のそれに従うのが普通だ。妻にヨガの世界に引き込まれたら、どんなマットを用意するのか、どんな教室に通うかというものは、ことごとく妻のそれをまねることになるだろう。自分のこだわりが出てくるのは、それをある程度自分に取り込んで自分のものにしてからである。

結局自分の思考や行動パターンは可塑性があるものから無いものまであり、影響を受けやすいものはどんどん変わっていく。そして最後に変わらない部分が残るのだが、最後に何が残るのかは関係性によって随分違うだろう。

部屋の電気を消せない、という例を取ろう。あるカップルで、夫はどうしてもこれが出来ないという人がいるという実例からとる。夫はトイレを使用した後は電気を消すが、自分の部屋を出てリビングで食事をするときなどに電気を消さない。妻はそれが我慢できないのだ。いくら言っても電気を消せない。しかし夫は普通に仕事をしていて社会生活は出来ているという。もちろん仕事場で電気を消すことが励行されているなら、夫は従うことが出来る。妻は「こんな子供でもできるようなことが出来ないのは、おかしい。というより私を馬鹿にしている、甘えている」と言って腹を立てるとしよう。まさかこの一事で離婚という事にはならないものの、夫という人間を信じられないと思うかもしれない。しかし夫はそれ以外の沢山の行動を妻の勧めに従って変えて来た。帰宅したら靴の向きを反対側にすることだって出来るようになっているのだ。(私は出来ない)。 もちろん夫も妻が本気になり夫の行動を変え、例えば電気を消し忘れるごとに一万円を徴収するという事を実行するならば、彼の行動は直るはずである。