2023年9月29日金曜日

テクニックとしての自己開示 コラム

 自己開示:コラム)受付時の表情がすべてある  ―第一印象のそのまた表層、「第一表層」について―


 昨日自宅近くにある耳鼻科を受診した。喉の調子が悪いので、喉頭鏡で調べてもらったのだ。それにしても最近の喉頭鏡は実によくできてる。すごくフレキシブルで、吐き気もほとんどなく・・・・・・・という話ではなく、医師の第一印象の話だ。私はその耳鼻科の女医さん(40代女性)がとてもいい先生だと思ったし、これからも時々通おうと思った。診察はほんの10分足らずで、その大半は四苦八苦しながら喉頭鏡を鼻から入れる作業に終わったので、ほんの一瞬、しかもマスク越しの会話をしただけだが、その先生は感じがよかった。最近おなじ耳鼻科にかかったカミさんの印象も同じだったというので間違いない。

 第一印象で私達は「この人は親身になって話を聞いてくれるか」という事に関心を払うわけだが、もちろん一瞬でその人の価値などわかるはずもない。入試の際の口頭試問や就職の際のなど、それこそ30分ほどかけて色々質問をしてその答え方を見るわけだが、それが結果的に大外れだったりもする。私自身もどうしてこんな一瞬の印象でその耳鼻科のお医者さんを信用するようになるのか、とおかしくなる。しかしそれはまさに私たち医師がに期待することを反映しているのだ。例えばグーグルの星を貰う時に、患者さんたちが持つ印象と同じなのだ。間違いなく医師は何かを発し、或いは何かを捉え損ね、それが患者に伝わり、それが好印象や悪印象を与える。しかしその一瞬の印象は正しいのか?

 私のよく知る精神科医で、私はとても好きなのだが、グーグルではあまりいい星を貰っていない人もいる。その医師に低いポイントを付ける患者はその医師のいい点を拾っていないのではないかと思う。もったいない話だ。しかし彼(女)は患者に対しては全く別の側面を見せるかもしれない。患者の側からすれば、とても大切なプロセスなのだ。

 もとより動物としての人間は、この人を信用できるかどうかをまさに一瞬で判断する必要がある。ちょうど散歩中のワンちゃんどうしが道で初めて出会った時に、おしりを嗅ぎ合うのと同じだ。何しろワンちゃんたちは、相手の見てくれよりは、おしりの匂いが決定的なのだ。そちらからくる嗅感覚がはるかに頼りになるのだろう。

 もちろん第一印象がすべてではない。第一印象がかなり悪かったにも関わらず関係を持ち続ける内にゴールインしてしまったというカップルも時々聞く。それとは反対に、最初の瞬間でビビッと来て意気投合しても、結婚して半年でお互いに我慢が出来なくなってしまうという場合もある。ただ恐らく相対的には、第一印象の持つ意味はやはり大きいのだろう。第一印象がお互いにいい相手となら、悪い相手とよりもより長く良好な関係を持つことが統計的には言えるだろう。(実はその様な統計の存在を知らないが。)

では私たちはその一瞬の間に何を見ているのか。

この議論は自己開示の問題と間接的につながっているはずだ。しかし自己開示というよりは、self-presence というくくりの方がより正確だろう。何と訳すのか。「自己呈示」だろうか? しかし最近よく聞く tele-presence という言葉に提示は合わない気がする。