そもそもコアとは何か?
実は同じことを20年以上前に考え、理論を提出した学者がいる。どれがノーベル賞受賞者 Gerald Edelman の「ダイナミックコア」説である。この連載にもすでに何度も登場していただいている。
「脳の特定の場所はこのダイナミックコアに常に属しているのだろうか? このコアは分割されたり、増殖したりするのだろうか?この複数のコアの存在に関する病理的な状況はあり得るのだろうか? あるいは一つのコアに異常があるのだろうか。次のように予測することには意味があるだろう。意識に関する病理、特に解離性障害やスキゾフレニアは、ダイナミックコアの病理によるもので、その結果としてダイナミックコアの複数化を引き起こすのだろうか?」(Edelman & Tononi (2000) Universe of Consciousness. Basic Books.) p154)
この引用文は貴重である。なぜなら Edelman の研究をそのままDIDの理論に引っ張ってくることが出来るからだ。
ではそのコアとは何か。Edelman & Tononi の "Universe of Consciousness”(p.144)での表現は結構曖昧だ。「神経細胞の集団が以下のような条件を満たす場合に、意識的な体験に直接貢献する。それらは機能的な固まり functional cluster として分配されたそれらの一部が、視床皮質システムの入再入 reentrant による関りを通して、数ミリ秒の間に高度の統合を達成する時。そしてその意識的な経験が支えられるためには、その機能的な固まりは、高値を示す複雑さにより示されるように高度に分化されている必要がある。」(念のため以下は元の文章。)
A group of neurons can contribute directly to conscious experience only if it is part of a distributed functional cluster that, through reentrant interactions in the thalamocortical system, achieves high integration in hundreds of milliseconds. To sustain conscious experience, it is essential that this functional cluster be highly differentiated, as indicated by high values of complexity. (Universe of Consciousness. p154
この図は Edelman (2004)Higher than the Sky.Yale University Press, p.71 より引用。