サイコパス性について
サイコパスと見なされる人々は圧倒的に男性に多いことを前提として話す。だからこそこの論述で取り上げるべき問題なのである。
まずサイコパスの定義としては、良心の欠如、他者に対して冷淡で共感性がない、慢性的な虚言、罪悪感が皆無、自分の行動に対する責任を取らない、自尊心が過大である、口が達者で、表面上は魅力的である、などの特徴を有する(R.ヘアのチェックリストより)。
このサイコパス性については、それがかなり生物学的に、あるいは遺伝的にさだめられているということが言われている。たとえば脳科学的には扁桃体や眼窩前頭皮質等に異常が見られることが多い。
また遺伝率(※)は40~70%程度とされる。これはかなり高い値だと考えるべきである。
※ 全表現型分散に対して遺伝分散が占める割合で定義される。量的遺伝学において平均への回帰の程度を示す量であり、小さいほど回帰が大きい。
そしてサイコパスは従来は治療は不可能とされてきた。今でも多くの臨床家は同じような意見を持っている。不治の病、と言ったところだが、もちろん本人たちはこれを「病」とは認識していない。
小児性愛について
もう一つが小児性愛、ペドフィリアである。これは後期思春期以降(16歳)で、思春期以前の子供(13歳以前)に対してのみ性的な興味を持つことと定義される。いわゆるパラフィリアの一つの形態とされる。そしてこれも圧倒的に男性に多い。(パラフィリア自体が圧倒的に男性に多い。パラフィリアの他の形である覗きや露出を好んで行う女性、ということは普通はイメージできないだろう。)
小児性愛は原因は不明であるが、神経学的異常と心理的な病理が複雑に関係していると考えられている。たとえば遺伝負因は明らかでないが、低知能、低身長、高い左利き率、幼少時の頭部外傷(失神を伴う)が関係していると報告されている。
小児性愛の遺伝率は14%といわれるが、ここがサイコパスと大きく異なるところである。つまり遺伝負因を背負って生まれたということはパラフィリアに関してはない。もちろん幼少時から小児性愛の傾向があったということもあり得ない。(幼稚園児の頃からおなじ幼稚園児の異性に興味を持つことは、決して異常とは言えないからだ!)しかし思春期を過ぎて気が付く。「自分は思春期前の対象にしか性的な興味を持てない ・・・・」)そしてそれはその語一生続くのである。その意味では小児性愛も運命であり、通常は生涯にわたる障害である。つまり治療は通常は不可能と考えられているところがサイコパスと同様である。