2023年7月17日月曜日

トラウマとPD 4

 発達障害とPD


 発達障害についての認識が高まるにつれて、従来のPDの中でもいわゆるスキゾイドPDに少なからず影響があったのは確かである。DSMではスキゾイドPDは「社会的関係からの離脱および全般的な無関心ならびに対人関係における感情の幅の狭さの広汎なパターンを特徴とする」とされた。要するに「関係が希薄で孤立傾向のある人」は、DSMにおいてはスキゾイドPDを主とするA群PDに属するものとして理解されていた。しかし神経発達障害についての関心が高まるにつれて、これまでスキゾイドPDとして理解されてきた人の一部は実は前者に該当するのではないかと考えられるようになった。そして更にはスキゾイドPDという概念自体も問われることとなった。(織部直弥、鬼塚俊明、2014、岡野2020)

ちなみに2013年のDSM-5の作成過程でも、スキゾイドPDの処遇は問題とされたという。そしてそもそもスキゾイドPDという診断がまれであり、削除されるべきとの案もあったという。そして結局上述の「代替案」からはスキゾイドPDの姿が消えるかわりにそれが「感情制限型」と「引きこもり型」に解体され、それぞれをスキゾタイパルPDと回避性PDに合流させるアイデアが採用されたという(織部直弥、鬼塚俊明、シゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ DSM-5を読み解く 5 神経認知障害群、パーソナリティ障害群、性別違和、パラフィリア障害群、性機能不全群 神庭重信、池田学 編 中山書店 2014 pp171-174.)。 

私がこの動きに興味を惹かれるのは、本来スキゾイドPDの定義に合致するような、人に関心もなく、こころも動かないような、いわばスタートレックに出てくるドクタースポックのような人は稀ではないか、という考えを以前から持っていたからである。。実際DSM-5のスキゾイドPDの特徴としては、「関係念慮、奇妙な/魔術的思考、錯覚、疑い深さ、親しい友人の欠如」に続いて「過剰な社交不安」(DSM-5)が挙げられている。つまりスキゾイドPDはミスター・スポックよりは、恥の感情に悩む回避型PD的な特徴を持つことになるのだ。そしてスキゾタイパルPDに関してもそこには対人過敏が特徴とされるという研究がある。

  ともかくもこのASDに対する関心の高まりがもたらしたのは、PDの概念に神経発達障害的な要素を読み込まないという従来の方針は理屈に合わないのではないか、ということである。