2023年7月10日月曜日

連載エッセイ 5の5

部分的に書き直している。

 「脳の変化により心の変化が生じるが、その逆に心の変化が脳の変化を引き起こすわけではない。」 

これは哲学的な思考により得られた仮説ではもはやない。脳波という目に見えるエビデンスにより示されている事実なのである。この意味するところは途方もなく大きい。一言でいえば、私達が自由意志と思っていることは錯覚だったということになるのだ。私たちが自由意思により決断したと思っていたことが、実は脳により先んじられていたことを考慮した場合、そのように結論付けざるを得ない。デネットの「意識やクオリアは錯覚である」という主張は、まさしくその通りということになる。



  そしてまさしくその前提に立っているのが前野隆氏の受動意識仮説である。そちらに耳を傾けてみたい。彼の説はクオリアにまつわる頭の痛くなるような議論を颯爽と回避しつつ、このテーマについての有用な指針を提供してくれるのだ。