男性の性的な興奮とポジティブフィードバック
男性の性的興奮のパターンがポジティブフィードバック型であるという説明をしても、その意味が正確に伝わらない可能性がある。それはポジティブフィードバック(面倒なので以下PF、それと対になるネガティブフィードバックはNFとしよう)は今では褒めるとか勇気づけるという意味になってしまっているからだ。
その前にNFから。要するにある量が多く分泌されると、それに対して「多すぎるぞ!少なくしよう」というネガティブなフィードバックがかかって、その量が適度なレベルに落ち着くという、当たり前のメカニズムだ。人間の体ではその様な形でホルモンなどのバランスがうまく取れている。でもそのほか一般的な事象でも、いくらでも例は見つかる。お腹がすいたり喉が渇いたりして、食物や水分を取ると少し癒されて落ちつく、という風に。あるいはネズミが増えすぎて自分たちの餌が足りなくなることで、その数を減らす方向の力が働くという風に。(どうもテキトーな例ばかり挙げているようだが、要するにそういうことだ。) このようなよくある調整のメカニズムに比べて、PFの場合は異常だ。ある量が増えると、ますますそれが増えて歯止めが効かなくなり、行くところまで行ってしまい、そこである種のクライマックスを迎え、また振り出しに向かうというパターンである。
ポジティブフィードバックの例として、ネットではよく出産の際の仕組みを説明している。下垂体後葉からオキシトシンが分泌され、それが子宮収縮を起こすが、
それが神経反射を介して間脳を刺激しオキシトシンがさらに分泌され、さらに子宮収縮を起こす。つまりドンドン加速度がついて、最後には分娩 に至り一段落する。
以下はそれ以外の例。http://www.armt.net/images/files/PDF_files/IVP-News_PDF/article2014/ivpnews-140329-02-01.pd
「怪我をすると化学物質が血小板を活性化しますが、活性化された血小板から化学物質が放出され、さらに血小板が 活性化され最終的に大きな凝血を作ります。
また赤ちゃんが乳頭を吸引すると乳汁が分泌されますが、同時に乳頭刺激は神経反射を介して視床下部を刺激し、下垂 体前葉からプロラクチンを分泌させそれが乳汁分泌を起こします。」
そしてそれはちょうど男性が性的に興奮してエクスタシーを体験して収束するプロセスにも言えるわけだ。つまり男性の性的な満足は、常にもっともっと、という基本的な性質を持ち、ある程度で歯止めがかかるという性質を有さない。つまりお腹が空いたのでお菓子をつまんで一応満足する、という形をとらない。性的興奮は、更に、更に、というポジティブフィードバックにより加速度がつき、最後には暴力的な形での興奮を求めることにもなる。
同じような事情は例えばアディクションについても言える。コカインを少量吸入する。するともう一度やりたくなるが、同じ量では満足しない。こうしてどんどん使用量が加速度的に増えていく。ギャンブル依存なども似たようなものだ。どんどん大きな金額をかけたくなる。こうして向かう先は破算であり、小さなカタストロフである。
なぜジャニー喜多川が、米国の映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる悪質極まりない性暴力・セクハラ疑惑が結果的にあれほどの犠牲者を出したのかも同じ事情だ。