前回始まったニューラルネットワークの話は、その進化版としてのディープラーニングの話に引き継がれることになる。ディープラーニングとは日本語で「深層学習」と訳されているが、最近は特にこの言葉をよく聞く。なぜならコンピューターの技術が発展して、いよいよ人間の脳に近い機能を備えたAIが出来つつあり、それを支えている機能が、このディープラーニングだからだ。そしてこのディープラーニングの発展と脳とが深くつながる可能性があるのだ。ディープラーニングの進化をさらに加速させ、そのはるか先の到達点で脳の機能と交わるのか?・・・・・ それはわからない。両者は永遠に一致しないのかもしれない。しかし間違いなく起きるのは、心を持った人間と、【心】を持ったAIが共存するようになるということだ。(ここで【心】とはAIに宿った一見心のようなもの、という意味で使うことをお断りしたい。)
以上のような書き出しで私は【心】というタームを導入したものの、私はそれがどこの方向に向かっているのか気が気ではない。というのも世界はたった今チャットGPTの話でもちきりになっているのだ。チャットGPTは米国のベンチャー企業である「オープンAI」が昨年11月に公開した対話型AIサービスであるが、瞬く間にその利用者が億の単位に達し、史上最も急成長したアプリであるという。しかもその開発のスピードは加速している一方で、私達はこのチャットGPTの登場の意味をつかみ切れていない状態でいるのだ。
つい先日(2023年3月30日)も、かのイーロン・マスク氏が、AIのこれ以上の開発をいったん停止すべきだと呼びかける署名活動を起こしたというニュースが伝わってきた。このまま盲目的にAIの開発を続けていくと、人類に深刻なリスクをもたらす可能性があるというのである。つまり私たちは私たちがコントロール不能になる可能性のある代物を生み出し、歯止めが効かなくなるうちにその開発をストップしようという試みである。しかし人々がAIの研究を止めるということなどおよそ想像できない。一昔前に核兵器が一部の国で作られ始めてその技術が確立してからは、その開発を停止するいかなる努力も意味がなかったのと同じである。(現在では世界全体の核兵器は10000を優に越えているというから驚きである。)
皆さんはこのAIと脳の関係性をもしかしたらもう疑っていないかも知れない。その気持ちは私もわかる。心と【心】は永遠に別物かも知れない。しかし心もどきの【心】の存在は疑いようもない。私はもう何度もチャットGPTと「会話」し、そこに心のような存在(【心】)を感じ取っている。なぜならチャットGPTはもはや人間並みに、いや人間を超えるレベルで対話が可能な存在となっているからだ。少なくとも話し相手としては想像を超えた能力を発揮する現代のAIは脳と同等レベルの存在として迫りつつあるのだ。