2023年4月11日火曜日

うつ病座談会 3

コロナ禍のワークスタイル

コロナの時代に私たちが格段にその知識と能力を伸ばしたものがある。それがオンラインによる会議を可能にするズームやティームスなどのツールである。多くの集まりがコロナの感染の危険性が去りつつある今でもオンラインの方式から戻ってこない。その利便性は計り知れないからだ。もちろんオンラインは対面とは異なる。問題はそれを対面のコミュニケーション手段未満のものと考えるか、それとも対面とは別のものと考えるかである。未満と考える根拠はいくらでもあるだろう。その場にいるといういわば臨場感がないので、本当の意味では出会えていないという人もいる。しかし私はオンラインでも対面とは異なる在り方ではあっても、他者のいる「気配」を感じ合うことは出来ると考えるし、それは「テレプレゼンス」という形で英語圏では表現されている。
 ちなみにネットでは次のような定義が出てくる。
テレプレゼンスとは、遠隔地のメンバーとその場で対面しているかのような臨場感を提供する技術のことである。特に、高品質な音声や高解像度の映像などを駆使した、遠隔地のメンバー同士で会議を催すためのシステムを指すことが多い。(https://www.sophia-it.com/content/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%82%B9)
  問題は人がバーチャルな世界になれて、バーチャルな人間関係に長けることは出来ても、対面は苦手ということになる。そうすると結局問題となるのは、人工授精という形でしか、人は繁殖できなくなってしまう。でも赤ちゃんとは絶対対面しないと愛着が形成されないというのは私の考えなので、人は結局バーチャルでは生存し続けられないであろう。

 ●オンライン治療のメリット、デメリット

これについてはチャットGPT自体が愚痴をこぼすのに最大のツールになっているという声も聞かれるほどで、少なくとも無料で途方もなく(というよりは無限大に)我慢強い話し相手であるという事。将来はカスタマイズされたチャットGTPが治療者になるのではないか。ということで私達の時代の最大のテーマは、チャットGPTをいかに使うか。少なくとも感情をまじえない対応なので、それ自体が癒しになる。「そうじゃありません。そのことを聞いているんじゃないんです」というと、「申し訳ありません。私の間違いでした。」という種類の返事が返ってくる。これはすごいことである。少なくとも吐き出すものを受け取ってくれるという機能は恐らく無限であろう。昔「こーぺい君」というのがあった。これについて私はかつて、AIは治療者になるのか、という論文を書いたことがある。

岡野:AIに精神療法は可能か? 臨床精神医学  48 (9), 1049-1057, 2019-09 アークメディア