共感の脳科学というテーマについて考えるとき、マインドフルネスにより脳にどのような変化が起きるかについて。これが重要なカギとなる。
以前ネットでTom
Irland という人の記事を読んで以下のようなまとめをしたことがある。マインドフルネス瞑想で以下のことが起きるらしい。
扁桃核の委縮、前頭前野の厚みの増加、扁桃核と周囲の機能的結合性の低下、注意と集中の部位の結合性の増加。つまりマインドフルネス瞑想により激しい感情に捉われることが少なく、また感情により思考能力が低下するということが少なくなったという。
少なくとも扁桃核が抑えられているということにより、情動的共感による疲労や苦痛から治療者を守ってくれることを意味することになる。次の論文
Bremer, B., Wu, Q., Mora Álvarez, M.G. et al. Mindfulness
meditation increases default mode, salience, and central executive network
connectivity. Sci Rep 12, 13219 (2022)
には面白い結果が記載されている。ひと月マインドフルネス瞑想をすると、いわゆるデフォルト、サリエント、課題遂行という三つのネットワークの相互の結びつきが非常に強くなるということだ。
ちなみにこの論文はごく最近のもの(2022年)だが、そこでマインドフルネス瞑想に関係した脳の変化を比較的コンパクトにまとめてくれている。そこには次のようなことが書かれていた。
ACC(前帯状回)、PFC(前頭前皮質)の活動が高まり、それらが扁桃核を抑制する効果が見られること。
PCC(後部帯状回)の活動亢進はマインドワンダリングやself awareness などのデフォルトモードに関わる機能の促進を意味すること。しかし全体としてみれば、デフォルトモードは抑制されていること。デフォルトモードの活動は抑うつとかくよくよ考える事などのうつ病の症状に関連していることから、デフォルトモードを抑えるという働きは抗鬱効果と考えることが出来るという。
次に
Yang CC, Barrós-Loscertales A, Pinazo D, Ventura-Campos N, Borchardt V,
Bustamante JC, Rodríguez-Pujadas A, Fuentes-Claramonte P, Balaguer R, Ávila C,
Walter M. State
and Training Effects of Mindfulness Meditation on Brain Networks Reflect
Neuronal Mechanisms of Its Antidepressant Effect. Neural
Plast. 2016, article ID 9504642.
から。要するに何もしない時と、瞑想をしている時の脳の活動を調べ、特にそれぞれのネットワークの結合がどれだけ強くなっているかを調べたのだ。そのエッセンスは次の通りだ。
During meditation, the internal consistency in the precuneus and the
temporoparietal junction increased, while the internal consistency of frontal
brain regions decreased. A follow-up analysis of regional connectivity of the
dorsal anterior cingulate cortex further revealed reduced connectivity with
anterior insula during meditation.
瞑想の間は、側頭頭頂接合部と楔前部precuneus の内部一貫性が増す一方では、前頭葉の内部一貫性は低下したという。フォローアップでは、瞑想中は背側前帯状回と島前部の結合の低下が見られた。
はっきり言って何のことだかわからない。というか私の歯が立たない。ただ幾つかの引用可能な個所があった。マインドフルネスの神経科学的なメカニズムはほとんどわかっていない poorly understood.(P2)