2023年2月25日土曜日

現代における心身相関の問題 4

  さて次はME/CFSである。ちなみにME myalgic encephalomyetitis 筋痛性脳脊髄炎)は欧州とカナダで、CFS(慢性疲労症候群)はアメリカとオーストラリアで用いられることが多いので平等にこのような名称にしているらしい。ネットで調べるとこの話で一杯という印象を受けるし、欲しい情報であふれている。今でこそこれだけ論じられているが、この病気は長年理解されなかった。1989年の段階では、この病気は恐らく心因性で、詐病だという臨床家もおり、患者が生理学的根拠のない症状を想像しているだけだという人もいたのだ。つまりMUSmedically unexplained symptoms 医学的に説明できない症状)の一つの典型だったのだ。
 しかし最近では生物学的な研究が進んでいて、この正体を突き止めるべく様々な研究成果が上げられている。「エネルギー代謝系やミトコンドリア機能の障害を示すエビデンスが次々と提出されているという。」国立精神神経医療研究センター(NCNP)からは「自律神経受容体に対する自己抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常」が見いだされたという発表が2020年になされた。また最近テレビで放映されたME/CFSについての番組では、患者の細胞の中のミトコンドリアが寸断された写真も出てきた。つまり患者の極端な疲労傾向の原因が明らかにされつつあるのだ。ということはもうこれは解離性障害や身体表現性障害などの精神疾患とは別の扱いが必要になるであろうということである。