さてよくわからなくなってくるのが、対人間の interpersonal ToM(対人間の)と個人内界の intrapersonal ToMの区別だ。でもこの個人内界(精神内界)のToMとは結局は内省の事だろう。これに関しては、例のデフォルトモードネットワークがこれに対応していることが知られている。この部分はいわゆる静止状態における脳の活動として知られているものでもある。そして今体験していることが自分の体験か他者のそれかの区別は非常に重要であるが、それについての役割を果たすのが、扁桃核との強いパイプを持つvmPFCらしいと書かれている(p288)。
それにしてもこのvmPFC は不思議な部位だ。これはあくまでも認知的な共感であるが、それは相手の情動についてのそれなのだ。そして相手の情動を認知的に知るためには、結局自分の情動も動かしているということなのだろうか。
次に書かれていることも面白い。どうやら認知的ToMと情動的ToMが乖離してしまうという状態がよく知られているらしい。それらはパーキンソン病、MS(多発性硬化症)、統合失調症、精神病質、BPDなどであるという。
そして論文ではこう書かれている。自己と他者の区別という機能を担う部位と、情動的なToMとは、一つの大きなネットワークを形成し、それが相手の心の理解に重要な位置を占めているというのだ。
ということでいよいよ情動的共感についてである。こちらはいわゆるsimulation が関わってくるという。Simulation は擬態とか模擬実験とかいう訳語があてられるが、結局は脳を対象と同じような形で働かせることであるという。つまり対象と同じような心の働かせ方をするわけだ。そしてそのために活動する脳の部位が島、扁桃核、ACC(前部帯状回)である。そしてこれらの活動が低くなっているのがサイコパスだと言われる。この部位はスティーブンファロンが言っていた部分だろうか?彼はOFC,vmPFC、ACC、扁桃核を言っていた。微妙にずれているな。これらは情動的、認知的ToMと情緒的共感のすべてにまたがっているな。だいたいわかって来たぞ。