「共感の脳科学」というお題で書かなくてはならない。そこで必要に迫られてアランショア先生の「右脳精神療法」(小林隆児先生訳)を読んでいるが、興味深いのが二つの脳が同期化するという現象だ。最近の脳科学は、一人の人間の脳だけでなく、複数の人の脳をスキャンすることで、ふたりの脳の興奮がどのようにシンクロするかを調べているという。(対人関係神経生物学 interpersonal neurobiology という分野もあるそうだ。)ショア先生によれば、ふたりの人間が感情を共にするとき、右側の側頭頭頂接合部(TPJ)が同期するという。そしてこの部分が障害されたときに二人の人間の間の交流に障害が出るという。
Decety, J, Claus,L. (2007) "The Role of the Right Temporoparietal Junction in Social Interaction: How Low-Level Computational Processes Contribute to Meta-Cognition". The Neuroscientist. 13 (6): 580–593.
そしてこの機能はいわゆる「熱い認知」に関係している。つまり他者の感情状態を感じ取る能力である。これは他者が何を考えているかを知る能力(冷たい認知)との対応でしばしば論じられる。