結論
以上論じたうえで最初の質問に戻る。発達障害(DD)とパーソナリティ障害(パーソナリティ症、以下PD)の鑑別診断のポイントは何か?
ここでは対人関係をあまり持てない、孤立しがちな人々について、その様な傾向が他の診断の特徴として現われている場合(例えば統合失調症、うつ病など)を除き、またスキゾイドの中で例外的でかつ少数派と私が考える感情制限型のそれを除いて考える。するとその多くがASDなのか、回避型スキゾイドかである可能性が高いことになる。(そのように考える根拠についてはここまでの論述である程度示したつもりである。)そしてその中には両者が合併している可能性も当然ありうる。その前提で考えよう。
① それらの傾向が幼少時から見られるか、それとも思春期以降に見られるのか。前者ならASD、後者なら回避型スキゾイドということになる。
② 対人スキルがどの程度高いか。低いほどASDの可能性が高くなる。ただし回避型スキゾイドの場合も決してそれに巧みでないことから孤立傾向が生じる場合があるだろう。
回避型スキゾイドは対人状況における白けに敏感でそれを修復するために多大なエネルギーを要する。そしてそれよりは孤立したほうがよほど楽だと考える。ASDは対人緊張をある程度感じるものの、自分の言動が白けを増幅しているという事情が主観的にはつかみにくいので、対人場面で次々と墓穴を掘り、その結果に後で苦しむのである。
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ASD |
回避型スキゾイド |
感情制限型スキゾイド |
場の空気 |
読むのが苦手 |
読むことは可能 |
読むことは可能ではあるが関心はない |
心の理論 |
あまり成立せず |
通常レベルで成立 |
通常レベルで成立 |
対人スキル |
低い |
やや低い |
ある程度ある |
対人状況(幼少時) |
遊び方がわからずに孤立傾向 |
友達と遊ぶことは可能だった |
友達と遊ぶことは可能だったが関心はなかった。 |
対人状況(現在)
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孤立傾向(何かに没頭していることが多い) |
孤立を好む(一人の方が気 が楽なため) |
孤立を好む(他者に関心がないため) |
人と交わりたい欲求 |
普通にある。 |
普通にある。 |
ない |
対人緊張 |
ある程度ある |
非常に強い |
特にない |
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