2022年12月30日金曜日

発達障害とPD 13

  さて以上の前提の上で改めて定義を見直してみよう。スキゾイドのエッセンスは以下のようなものだ。DSMでは「スキゾイドパーソナリティ障害は,社会的関係からの離脱および全般的な無関心ならびに対人関係における感情の幅の狭さの広汎なパターンを特徴とする。」となる。ただしこの定義については、前述のごとく感情制限型のそれであり、それとは別のタイプ(回避型)の場合は、おそらく以下の様に書き換えるべきであろう。「スキゾイドパーソナリティ障害は,社会的関係からの離脱および表面上の無関心ならびに対人関係における感情の幅の狭さが見られるが、それは背後に強い対人緊張や恥の感情への防衛と考えられる。(岡野)」 そこでスキゾイドは感情制限型、と回避型と分けて論じる必要があるのだ。そして後者を主として論じることとする。
 他方ASDについては同じくDSMでは「相互の対人的、情緒的関係の欠落、異常な近づき方、会話やお喋りの出来なさ、興味、情動、感情を共有することの難しさ。対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動をとることの欠如、人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠如。」
 こうして見直すと、両者はかなり異なる臨床像を示すことになる。ちょっと特徴を抽出してみるならば、回避型スキゾイドでは、対人スキルをある程度は持っている。また人と交わることの楽しみは持つが、他方では強い対人緊張がそれを阻む傾向にあるため、むしろ一人でいる方を選択する。それに比べてASDでは本人は人と交わりたいがそのスキルが伴わずに上手く交われず、その楽しみを体験できずに寂しい思いをする。つまり両者は社会性の交流social interactionが上手く行かないが、その仕組みが違うのだ。
 そしてそれは研究①、②を反映したものである。つまり回避型スキゾイドはASDよりも対人スキルを有するものの、しっかり扁桃核が興奮していることからわかるとおり、そこには大きな感情の揺れがあるのだ。