スキゾイドとASDの違いについての研究は散見されるが、そこで強調されることの一つは、ToM(セオリーオブマインド)ないしは社会的認知(social cognition (SC))との関連である。ToMとは要するに他人の心の状態をどの程度理解できるかという問題である。ある研究はSDとスキゾイド、スキゾタイパルとの鑑別が一番難しいとした上で、両者における社会的認知の欠陥の程度を調べた。著者Boules-Katri はadvanced ToM test を、ASDとスキゾイド/スキゾタイパル、そしてコントロール群に実施した。このテストは情緒コンポーネントと認知コンポーネントに分かれるが、ASDでは両方が低かったのに対し、スキゾイド/スキゾタイパルでは明らかに認知コンポーネントが低かったという。またStanfiled 達はなんとfMRIで社会的認知を調べ、扁桃核の興奮がスキゾイド・・・・で見られたという。そしてこれはASDではSCが低く、スキゾイドでは高いという説だけでなく、スキゾイドでも感情は動いているということを示していることになる。
またASDとPDとの関連ではBPDも話題になる。ちなみに私はこれも以前から疑っていたことである。BPDの人で、特に他罰傾向の強い人たちには、発達障害の傾向があるのではないかと思うことが前からよくあった。研究③によれば、「ボーダーラインとASDの両者とも他者の気持ちを理解したり、対人機能を発揮したりすることが苦手だ」たしかに。「そこで624人のASDの人と、23人のBPDの人と16人の併存症の人、そしてたくさんのコントロール群を対象に、AQテストと共感性質問票EQ(empathy quotient)、システム化質問票―改良版SQ-Rを行ってみた。」
するとAQテストでは、BPDの人はASDの人たちほどではないが、コントロール群よりも、そして併存症群よりも、高いスコアを示した。そしてEQではBPDの人は併存症の人とASD の人よりは高い点数を示した。またSQRについては両群がコントロール群より高かったという。つまりはBPDもASDのようにAQが高く、システム化する傾向(つまりある種のこだわりの傾向)にあり、両者のオーバーラップは明らかだということである。