2022年11月30日水曜日

脳科学と心理療法 デフォルトモード 1

 デフォルトモードということ

 いわゆるデフォルトモード(ネットワーク)という概念が大いに関心を集めている。「デフォルト」というと「~の経済がデフォルトに陥る」、債務不履行になるという意味だが、パソコン関連では工場出荷状態、あるいは「初期値」という意味だ。私の中ではそろばんの計算初めの「ご破算で願いましては‥」の「御破算(ゴハサン)状態」なのだが、この比喩は誰もが手っ取り早くスマホの電卓機能を使うような時代になってしまうと意味がないかもしれない。

とにかく脳のデフォルトモードという考え。私にはこれがたまらない魅力だ。というのもデフォルトモードは脳の「素の」状態を表現しているからである。脳は何もしない状態でも活発に活動をしているのだ。「何も考えないように」という指示を受けてfMRIで脳の様子を見てみる。そこには何の活動も見られないのではないか、画像としては何も出てこないのではないか、というのが大方の予想だった。しかし研究者たちはやがて知ることになる。「何もしていない」はずの脳がワサワサと活動をしている!? いったいどういうことだろうか?

ネットワークモデルということの意味についてはすでに述べた。脳は巨大なネットワークである。そしてそこでの興奮のパターンがある種の心のあり方を表している。特定のパターンが心の状態や機能に対応する。例えば言葉を一生懸命話す時は、左前頭葉のブローカ野という運動性言語野が興奮を見せるというように。そして何もしていない状態、デフォルト状態ですでにパターンがあるということは、何もしていない状態で脳はすでに何かをしているということを意味する。