2022年9月22日木曜日

不安 推敲の推敲の推敲 4

 過剰なD不安はまた、CSTCループ自身の過活動も関与している可能性がある。強迫観念はそのような機序として近年研究が進められている。

ところで「不安システム」の変調としてもう一つ述べておかなくてはならないのが解離の機制である。恐怖体験は時にはT不安以外の反応を引き起こす可能性がある。それが最トラウマに対する解離反応であり、PTSDの「解離タイプ」という存在である。

以上不安の精神病理について、フロイトの見解の後に付け加えられた生物学的な所見によりそれを拡張した形で論述を行った。不安という私たちになじみの体験は、私達生命体が破局的な体験を乗り越えて心身ともに生き残るための極めて基本的かつ必須のものである。「不安システム」は私達の心がトラウマ的な状況に際して症状として現われた強烈な不安(T不安)に対してそれを意識的、無意識的レベルで常に予測し、いわばD不安に変換することで準備するという、脳科学的なレベルで巧妙に作り上げられていると言っていい。ただしこの精妙な「不安システム」は時に変調をきたし、それが様々な不安障害として体験される。そしてそのメカニズムの詳細やや薬理学的な治療手段は日夜研究されている。しかし日々の不安とどのように向き合い、T不安をD不安に昇華していくのは私たち一人一人の意識的な心的活動の重要な局面であり、また精神療法家が寄り添い、援助するような課題でもあるのだ。