とほほ・・・。抄録を忘れていた・・・・。
本章ではパーソナリティ障害についての総括的な解説を行なう。まず「概念と病態」においては、パーソナリティ障害が19世紀のフランスにおける心的変質論に始まり、 ドイツ精神医学においてKoch, Kraepelin, Schneider らにより洗練され、精神分析の影響を受けつつ1980年の米国におけるDSM-Ⅲ において現代的な体裁を整えられた過程について論じた。また現代のパーソナリティ障害論における最大のトピックと言えるカテゴリカルな診断からディメンショナルな診断への移行の背景に触れ、それが現代の精神医学におけるエビデンスないしは生物学的な知見を重視する潮流と深い関連がある事情について述べた。次に「診断」においては、カテゴリカルな診断の代表としてDSM-5(第Ⅱ部)、ディメンショナルな診断の代表としてICD-11の分類をベースに論じ、両モデルの持つ特徴や問題点についても言及した。すなわち前者は直感的に把握しやすいが疫学的な検証を行う上での問題が多い一方、後者はより正確にパーソナリティ障害を把握し表現できる一方では煩雑で臨床における利便性を妨げる傾向にある。最後に「治療」においては、パーソナリティ障害の心理社会的なアプローチや薬物療法に関して、境界パーソナリティ障害を中心に主要な論点に触れた。パーソナリティ障害の概念は今なお流動的で、今後も更なる発展や変化を経る可能性を秘めている。ディメンショナルモデルに基づく最新の分類についても、今後の医療者側の反応が待たれる。