2022年9月13日火曜日

高機能のサイコパス 2

 そもそもサイコパスとはどのような症状を示す人たちだろうか。有名なロバート・ヘアのPCL-R (サイコパシーチェックリスト、改訂版)はそれを4つの分野、つまり対人面、情緒面、生活様式、反社会性に分けている。

対人面:口達者で表面的な魅力/誇大的な自己価値感/病的な虚言/偽り騙す傾向・操作性

情緒面:良心の呵責や罪悪感の欠如/浅薄な感情/冷淡さ、共感性の欠如/自分の行動に責任を取らない

生活様式:刺激を求める・退屈しやすい/寄生的な生活様式/現実的・長期的な目標の欠如/衝動的/無責任/放埓な性行動

反社会性:行動の制御が出来ない/幼少時の問題行動/少年非行/仮釈放の取り消し/多種多様な犯罪歴/数多くの婚姻関係

 ところでDSMに出てくる反社会性 PDはどうであろう。その診断基準は まず「他者の権利を侵したり無視したりする傾向。①社会のルールを守らない。②人を騙す/噓をつく。③ 衝動性/無計画性 ④攻撃性 ⑤自分や他者の安全を無視する ⑥仕事を続けられない。

DSMでは行動面を重視しているが「情動的な欠損」を強調していないということをDuttonは強調している。つまりサイコパスは空虚で情緒がない。反社会 PD から情動を抜いたものがサイコパスだ(Dutton)。これはわかりやすい定義だと言える。ちなみにDuttonが述べるには、ヘアによれば、囚人のうち 85% が反社会性PDを満たすが、サイコパスは 20% に過ぎないという。ところでICD-1011の「非社会性PD(Dissocial PD)は概ねサイコパスに相当する。つまり米国風ではなく、ヨーロッパ風の考え方を踏襲しているというわけだ。さてサイコパスの示す生物学的な所見ということだが、それはこのFallon の著書に出てくる図を紹介しよう。

要するに眼窩前頭皮質から、前帯状回、扁桃核、島皮質に至る部分の活動が低下しているということだ。これはファロンの著書に掲載されているMRIの図であるが、上の二人のMRIの図に比べて一番下のサイコパスの人の図は確かにこれらの部分の活動が低下しているように見える。そして驚くべきことだが、この最後の図がファロンその人自身の画像だというのだ。