2022年9月2日金曜日

交代人格を無視? 1

 「交代人格は無視する」ではうまく行かない

 という題でしばらく書くことになるが、実は私のこのテーマをここ一年間何度も扱っている。でも今度は依頼原稿なので、同じテーマでこれまでと違うことを書くことになる。

「解離性障害と他者性の病理」(近刊)での対談で、柴山先生、野間先生と話をした内容を収めることになっている。そのとき3人の間で、交代人格さんへのアプローチがかなり違うということが話題になった。DIDの方と話をしている時に、しばしば別人格さんは「見え隠れ」する。というか彼らは「見え隠れ」することに慣れている。そしれそれはBさんにとっては最初から起きていることなのだ。どういうことなのだろうか。

大抵はAさん(主人格)に変わってBさん(交代人格)が最初に出る場合、彼は「どうしよう、バレないかな?」とソワソワしているのが普通だ。何しろなぜ自分がここに今出されているのかが分からないことが多い。たいていの場合Aさんはピンチに立たされている。虐めや虐待の犠牲になり、どうしていいかわからない状態だ。その時に初めて登場するBさんは、しかし最初からすでにAさんの置かれた状態を分かっているかのようである。つまりAさんを救う用意があるからそこに出てきたわけであり、おそらくは漠然と内側からAさんの人生を見守っている。そして「Aさんを何とかしたい」と思っているうちに、いつの間にか出て来ているのだ。だから半ば「意識はあった」のだ。そしてまず何を考えるかと言えば、「とにかくAがいない間ナンとか持たせなくちゃ」である。かといって、「私Bですが、今Aの代わりをしています」などと言えないことはよく分かっている。そんなことを言ったら「変な人に」思われることを最初から分かっているからだ。かくしてご両親の前でも、B.C.DさんがそれぞれAさんのふりをして何年も過ごすということが起きてしまうのだ。