2022年8月11日木曜日

不安の精神病理学 再考 7

   私にとっての精神薬理の教科書である Stahl 先生のテキストを読むうちに、一つのことが明らかになった。不安に関しては、神経学的な研究が進み、特に扁桃核の研究が爆発的に進んだというのが、Stahl 先生の教科書に書いてある。そして彼は不安を恐れfear と心配 worry とに分ける。それぞれ脳において担当する担当する部位が違うのだ。

Fear(恐れ)⇒ 扁桃核中心のサーキット

Worry (心配、予期)⇒ 皮質線条視床皮質ループ(CSTCループ)

というわけだ。そして

恐れとは扁桃核から二つに伸びた経路、すなわち扁桃核-眼窩前頭前野、扁桃核―前帯状皮質の二つが過活動している状態。そして扁桃核はHPA軸を刺激したり、parabrachial nucleus 「傍小脳脚核」を刺激して呼吸に影響を与える。これで息が苦しくなる。それに青斑核に信号を送り、脈が速くなったり血圧が上がったりするのだ。そう、扁桃核が活動するということは身体症状が生じる。これがworry と違う所だ。

 一つの治療法としての「恐れの消去」P414 それは神経症的な不安に対するもの。それは扁桃核が感作された不安ということが出来る。

 こんなにはっきりしている以上、この両者の区別を明確にする必要があるだろう。恐れ≒外傷は扁桃体の興奮と身体症状を伴い、worry はそれを予期する≒予防するためのもの。しかし大概は両者は共存し、後は扁桃核の興奮の度合いに応じてfear が高くなるという分類。これしかないのではないか。