2022年8月17日水曜日

パーソナリティ障害 推敲 11

ディメンショナルモデルに基づく診断
 DSM-5(2013)ではそれまで準備されていたディメンショナルモデル寄りのモデル(より正確には「ハイブリッドモデル」)は、「第Ⅲ部 新しい尺度とモデル」の中に「パーソナリティ障害群の代替モデル」として掲載されるにとどまった。それとは対照的に、ICD-11(2022)ではさらに一歩踏み込んで、PDに関して全面的にディメンショナルモデルを採用しているので、それに基づく診断について説明する。
 ICD-11ではまず対象となる患者にPDが存在するか否かを問う。いわばPDをそのまま一つの障害として扱うことになるのだ。それは具体的には「自己機能障害」と「対人機能障害」の存在により定義される。前者は (i) 自分のよりどころを持ったアイデンティティを持つ(ii)自分の存在に肯定的な価値を見出す (iii) 将来へ向けた「自己志向性」を持つといった「自己機能」を保持しているかどうか、後者は (i) 他者と親密な関係を確立し、維持できる(ii)他者の立場を理解できる (iii) 他者との対立に首尾よく対処できる、等の「対人関係機能」を保持できるかを問う。そしてPD「自己機能」の問題および/または「対人機能不全」を特徴とする長期にわたる(例えば2年以上)異常と定義する。
そしてそれが存在する場合にはその深刻さ、すなわち軽度、中等度、重度のいずれかを示す。またPDとまではいえず、仕事や交友関係を維持することに支障はないものを「パーソナリティ困難 personality difficulty」として示す。そして次の段階として、そのPDに関係している特性 trait を問い、それが際立っている時にはそれを一つ以上記載していく。この様にパーソナリティ困難も含めPDふくめOCD-10 に比べて診断閾値は下がっていると言えよう(加藤、2022)
参考文献
加藤 敏:  パーソナリティ症および関連特性群―正常なパーソナリティ機能とパーソナリティ症,パーソナリティ特性― 連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ 各論⑬ 精神経誌. 124 (4): 252-260, 2022