テクスト的な文章は、自分の頭で考えなくていいので、ラクである!!
現在の精神医学におけるパーソナリティ障害の分類及び診断をめぐる議論の趨勢は、従来のいわゆるカテゴリカルモデルから、ディメンショナルモデルに向かいつつある。カテゴリカルモデルとは、正常とは画然と区別されるべきいくつかの典型的なパーソナリティ障害を同定して列挙するモデルであり、ディメンショナルモデルとは、パーソナリティ障害における特性ごとにその度合いを数量的に捉え、その組み合わせにより示すという方針である。このどちらを選ぶかにより、診断の仕方は大きく異なることになる。本稿ではその両方についての主要な論点を紹介する。
カテゴリカルモデルに基づく診断
2013年に発表されたDSM-52)では、予想に反してこれまで通りのカテゴリカルモデルが前面に示され、準備されていたディメンショナルモデル寄りのモデル(より正確には「ハイブリッドモデル」)は、「III. 新しい尺度とモデル」の中に「パーソナリティ障害群の代替モデル」として掲載されるにとどまった。
他方では2018年に原案が示され、現在世界的に使用が開始される予定のICD-11においては、ディメンショナルモデルが全面的に採用された。このDSMとICDの明確に異なる方針は、PDをめぐる現在の識者たちの意見の相違をそのまま表しているともいえる3)。ただしこのことはこれまで十分なエビデンスの支えもなく論じられてきたPDの概念が、より現代的な姿に生まれ変わるために必要なプロセスとも考えられよう。さらには最近極めて頻繁に論じられる発達障害とPDとの関係性をめぐる問題も今後絡んでくる可能性もある。
まずDSM-5の概要を示そう。
DSM-5第Il部では、基本的にはDSM-Ⅲより引き継がれている10の類型が、1987年のDSM-IIIR)以降3群のクラスターによって分類されるのが慣例とされている。更に詳しくは以下の特徴を示す(訳はDSM-5日本語版big book)
以下のパーソナリティ障害が含まれる .
A群 (奇妙で風変わりな特徴を持つ)
・猜疑性パーソナリティ障害Paranoid personality
disorder他人の動機を悪意あるものとして解釈するといった,不信と疑い深さを示す様式。
・シゾイドパーソナリティ障害 schizoid
personality disorder 社会的関係からの離脱と感情表出の範囲が限定される様式。
・統合失調型パーソナリティ障害Schizotypal personality
disorder 親密な関係において急に不快になることや,認知または知覚的歪曲,および行動の風変わりさを示す様式.
B群 (演技的で情緒的で、移り気な性質により特徴づけられる)
・反社会性パーソナリティ障害Antisocial personality
disorder 他人の権利を無視する,そして侵害する様式。
・境界性パーソナリティ障害 Borderline personality disorder対人関係、自己像および感情の不安定と、著しい衝動性を示す様式。
・演技性パーソナリティ障害 Histrionic personality
disorder 過度な情動性を示し,人の注意を引こうとする様式
・自己愛性パーソナリティ障害Narcissistic personality
disorder 誇大さや人から賞賛されたいという欲求,共感の欠如を示す様式。
C群 (不安や恐怖により特徴づけられる)
・回避性パーソナリティ障害 Avoidant personality
disorder社交的な抑制,自分を不十分と感じ、否定的評価に対する過敏性を示す様式。
・依存性パーソナリティ障害 Dependent personality
disorder世話をされたいという過剰な欲求に関連する従属的でしがみつく行動をとる様式。
・強迫性パーソナリティ障害Obsessive-compulsive
personality disorder秩序,完壁主義,および統制にとらわれる様式 .